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デフレからインフレの時代へ世界が大転換している今、相場の大局観を養うために必要なのは「経済指標」を読むことです。アメリカ、日本、中国経済の現状を正確に把握するために押さえておくべき経済指標は何なのでしょうか。トルコ出身で1997年に来日後、エコノミストとして活躍するエミン・ユルマズ氏の『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)から一部を抜粋・編集して紹介します。
経済指標を読み解く「想像力」とは
経済指標はこれからの相場の転換点を教えてくれます。「経済指標」といっても、本当にたくさんの種類があります。有効求人倍率、失業率などの雇用関連、企業物価指数や消費者物価指数、GDP、鉱工業生産指数、機械受注統計、日銀短観、景気動向指数などなど。他にもたくさんあります。
また、ここに挙げたのはすべて日本の経済指標ですが、それと同じように米国には米国の、中国には中国の経済指標が存在します。経済活動や金融のグローバル化が進むなかでは、恐らく日本の経済指標だけを見ていては、世界経済の実像を把握することができません。つまり世界の経済指標を理解することも必要になります。
などと言うと、この時点で「ウンザリ」してしまい、経済指標について勉強しようなどという熱意はどこかに消えてしまうかも知れません。
でも、「経済指標」を専門家なみに知らないと投資ができない、なんてことはありませんから、ご心配なく。投資でお金を稼ごうとしているのであれば、細かい経済指標の中身を知らなくても大丈夫です。
それよりも大事なのは、経済指標の中身を知ることではなく、経済指標として出てきた数字を、どう読み解くのかということです。その点においては、ある種、「想像力」のようなものが求められるかも知れません。
米国の雇用統計は要注目の経済指標
数ある経済指標のなかでも、米国の雇用統計ほど株価や為替レートに大きな影響を及ぼすものはありません。最重要の指標と言えます。
発表は基本的に毎月第1金曜日。米国時間の午前8時半に発表されます。時差の関係上、日本でその結果がわかるのは、金曜日の夜です。夏時間が適用される3月の第2日曜日~11月の第1日曜日までは午後9時半が、そして夏時間の期間以外で適用される冬時間の間は、午後10時半が、日本における雇用統計の発表時間になります。
なぜ雇用統計が重視されるのかというと、第一に非常にタイムリーな指標であることです。
発表されるのが毎月第1金曜日ですから、曜日の位置にもよりますが、前の月末からそれほど日数を置かずに、前月の内容が発表されます。多くの経済指標は、集計が終わって発表されるまでの間、多少の日数を必要とするため、若干遅行する傾向があるのですが、雇用統計はほとんどタイムラグがありません。
雇用統計が重宝されるもうひとつの理由は、かなり詳細なレポートが出ていることです。雇用統計というと、失業率や非農業部門雇用者数の数字が注目されがちですが、実はこれらの数字以外にも詳細なレポートが出ていて、それをエコノミストや、機関投資家で運用を担当している人たちが重視しているのです。
英文表記ですし、実際にこれを読むためには、米労働省労働統計局のホームページにアクセスしなければならないので、日本の個人投資家には少しハードルが高い面もあるかもしれません。しかし、機関投資家やエコノミストなど、マーケットに関係している人の多くが注目していますから、それだけマーケットに大きな影響を及ぼすという点も踏まえて、せめて数字だけでも追っておくと良いでしょう。
日本の有効求人倍率の読み解き方
日本の雇用関連の統計についても簡単に触れておきます。実は日本でも、雇用に関する経済指標は定期的に出されています。失業率や有効求人倍率がそれです。
正直、米国のそれと比べてマーケットに及ぼす影響がほとんどないので、投資をするうえではほぼ無視しても良いくらいのものではあるのですが、日本の景気サイクルを把握するにあたって、重要視されているのが「有効求人倍率」です。
有効求人倍率は、仕事を探している1人に対して、何件の求人があるのかを示した数値。つまり就職のしやすさを把握するための経済指標です。たとえば求職者が100人いて、そこに求人が150件あるとしたら、有効求人倍率は1.5倍になります。
過去の数字を見ると、バブル経済がピークを迎えた1990年、有効求人倍率は最高1.43倍まで上昇しましたが、その後のバブル崩壊によって大きく低下し、99年には0.34倍にまで悪化しました。このときは「就職氷河期」と言われた時期です。
その後、徐々に回復するものの、リーマンショック後の2009年5月には、史上最低の0.32倍まで低下。この数字が1990年の最高値を更新したのが、2018年の1.62倍だったのです。
このように、有効求人倍率の上昇・下降を見ていると、ほぼ日本の景気サイクルをきれいに捉えていることがわかります。日本の景気サイクルという、極めて限定的な状況判断にしか使えませんが、一応、頭に入れておいて損はないでしょう。







