中国経済を見るには「香港のハンセン指数」

 中国の株価には、上海総合指数のように中国本土の証券取引所が算出している株価インデックスだけでなく、香港のハンセン指数のようにイギリス統治の時代から連綿と算出され続けている株価インデックスもあります。

 このうち私自身も、中国経済の実態を反映しているだろうと考えて、中国経済を見るときに使っているのが、香港のハンセン指数です。

 ハンセン指数は2018年1月に3万3484ポイントの史上最高値をつけた後、20年3月にコロナショックで2万1139ポイントまで低下し、21年2月には3万1183ポイントまで戻したものの、そこから下げが続き、22年10月には1万4597ポイントまで下落。史上最高値から見て56.40%の下落です。

 金融危機が生じる際、株価指数は高値から半値以下まで下がるというのが、過去のマーケットにおける経験則です。それから考えると、香港のハンセン指数は中国において重篤な金融危機が起きている証左であると考えられます。

書影『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)
エミン・ユルマズ 著

 ちなみに、なぜ上海総合指数ではなく、香港のハンセン指数を見るのかというと、これはマーケットの信頼度の問題です。

 中国は確かにGDPの規模では世界第2位ですが、本土の金融市場はまだそれほど整備されていません。上海総合指数は本土マーケットの株価動向を示す株価インデックスですが、上海や深セン(シンセン)にある株式市場は、グローバルな投資家が自由に株式を売買できない制約があります。

 その点、香港の株式市場は、外から中国経済に自由にアクセスするための玄関口みたいなところなので、どのような投資家にも門戸を開いています。だからこそ、そこで形成される株価は、中国政府の介入を受けることなく、世界が考える中国経済に対する評価が、比較的素直に反映されていると考えられるのです。