雇用統計が重宝されるもうひとつの理由は、かなり詳細なレポートが出ていることです。雇用統計というと、失業率や非農業部門雇用者数の数字が注目されがちですが、実はこれらの数字以外にも詳細なレポートが出ていて、それをエコノミストや、機関投資家で運用を担当している人たちが重視しているのです。

 英文表記ですし、実際にこれを読むためには、米労働省労働統計局のホームページにアクセスしなければならないので、日本の個人投資家には少しハードルが高い面もあるかもしれません。しかし、機関投資家やエコノミストなど、マーケットに関係している人の多くが注目していますから、それだけマーケットに大きな影響を及ぼすという点も踏まえて、せめて数字だけでも追っておくと良いでしょう。

日本の有効求人倍率の読み解き方

 日本の雇用関連の統計についても簡単に触れておきます。実は日本でも、雇用に関する経済指標は定期的に出されています。失業率や有効求人倍率がそれです。

 正直、米国のそれと比べてマーケットに及ぼす影響がほとんどないので、投資をするうえではほぼ無視しても良いくらいのものではあるのですが、日本の景気サイクルを把握するにあたって、重要視されているのが「有効求人倍率」です。

 有効求人倍率は、仕事を探している1人に対して、何件の求人があるのかを示した数値。つまり就職のしやすさを把握するための経済指標です。たとえば求職者が100人いて、そこに求人が150件あるとしたら、有効求人倍率は1.5倍になります。

 過去の数字を見ると、バブル経済がピークを迎えた1990年、有効求人倍率は最高1.43倍まで上昇しましたが、その後のバブル崩壊によって大きく低下し、99年には0.34倍にまで悪化しました。このときは「就職氷河期」と言われた時期です。

 その後、徐々に回復するものの、リーマンショック後の2009年5月には、史上最低の0.32倍まで低下。この数字が1990年の最高値を更新したのが、2018年の1.62倍だったのです。

 このように、有効求人倍率の上昇・下降を見ていると、ほぼ日本の景気サイクルをきれいに捉えていることがわかります。日本の景気サイクルという、極めて限定的な状況判断にしか使えませんが、一応、頭に入れておいて損はないでしょう。