何かを提案をした時、こんな言葉を言われたことはないだろうか?
「なんか、普通だね」「他の商品・サービスと何が違うの?」「この会社でやる意味ある?」
などなど。サービスや商品、仕組みなど、新しい何かをつくろうとするとき、誰もが一度は投げかけられる言葉だろう。
そんな悩めるビジネスパーソンにおすすめなのが、細田高広氏の著作『コンセプトの教科書』。本書には、
「教科書の名にふさわしい本!」
「何度も読み返したい」
「考え方がクリアになった」
といった読者の声がたくさん寄せられている。
この連載では、グローバル企業、注目のスタートアップ、ヒット商品、そして行列ができるお店をつくってきた世界的クリエイティブ・ディレクターの細田氏が、コンセプトメイキングの発想法や表現法などを解説する。新しいものをつくるとき、役立つヒントが必ず見つかるはずだ。(初出:2023年7月18日)
借り物の言葉ばかり使っていないか
残念ながら「薄っぺらい」という言葉で形容されてしまう人がいます。決して頭が悪い人でもなければ不真面目でもありません。ただ、何を話しても表面的に感じられてしまうのです。この「薄っぺらさ」の大きな原因のひとつは借り物の言葉ばかり使っているということです。
やや極端な例ですが、以下のような発言を考えてみましょう。
時代に乗っているのか、時代に流されているのか。そもそも正しく用語を理解して使っているのかもあやしい文章です。
こうした話し方をする人、身の回りにもいないでしょうか。言葉を使っているようで、言葉に使われている。発言に、その人なりの解釈という奥行きがなく、表面しか読み取れない。
このような状態を目撃した時、私たちは相手に「薄っぺらさ」を感じます。
自分の言葉で言い換える――リフレージング
以前、論客で知られる方と対談した際に、流行りのダイバーシティのことを「良い混沌」と表現したことに興味を惹かれました。
職場の多様性は、きれいごとを言っていても実現しません。性別や年齢はもちろん、宗教や言語や文化も違う人が一箇所で働いたらそれは混沌としたものになります。
けれど、そこから生まれるポジティブな創発性を信じる。良きものが生まれるようにマネジメントする。「良い混沌」には、こうした現場感覚に伴うリアリティがあります。世間が言うダイバーシティに対する自分なりの解釈があることで、発言が多層化し、発言に厚みが生まれるのです。
このように、ひとつのキーワードに対して、自分なりの「言い換え」を検討して立場を表明することをリフレージングと呼びます。
建築家のコルビジュエは、かつて椅子を「休息するための機械」と捉えてデザインしました。
ある政治家は政治を「可能性の芸術」と表現しました。
一味違う仕事をする人は、一味違う視点から物ごとを見て、独自の言葉を使っているものです。
流行り言葉を、自分なりに言い換えてみましょう。
例えば、AIはあなたにとってどのような存在でしょうか?
「常識人の同僚」と捉えるならば、常識的な考えはAIに、そこからはみ出た思考は自分で行うのだというスタンスが見えてきます。AIはAIでも「Augmented Intelligence」(拡張した知性)と捉えるのであれば、人間を置き換えるのではなくむしろ高めるものだという視点を伝えられます。
メディアに新しい言葉が出てくるたびに、それを自分の言葉で言い換える。このリフレージングを習慣にすると、多層的にものごとを捉えられるようになるはずです。
このほかにも、『コンセプトの教科書』では、発想法から表現法まで、コンセプトづくりを超具体的に解説しています。