何かを提案をした時、こんな言葉を言われたことはないだろうか?
「なんか、普通だね」
「他の商品・サービスと何が違うの?」
「この会社でやる意味ある?」
などなど。サービスや商品、仕組みなど、新しい何かをつくろうとするとき、誰もが一度は投げかけられる言葉だろう。
そんな悩めるビジネスパーソンにおすすめなのが、細田高広氏の著作『コンセプトの教科書』。この連載では、グローバル企業、注目のスタートアップ、ヒット商品、そして行列ができるお店をつくってきた世界的クリエイティブ・ディレクターの細田氏が、コンセプトメイキングの発想法や表現法などを解説する。新しいものをつくるとき、役立つヒントが必ず見つかるはずだ。
あなたの話が「つまらない」のは、「つまり」がないから。
ビジネスにおいて、コミュニケーション能力が高い人とは、どのような人のことだと思いますか? 話が上手い人や、饒舌な人を思い浮かべるとしたら、少々、ピントがずれているかもしれません。
皆さんの周りにもベラベラと喋る割に、何も伝えられない人がいませんか? 今や江戸時代の人が一生かけて得る情報をわずか1日で消費するとも言われる時代です。コミュニケーション能力とは「たくさんの情報を盛り込んで伝えられる」ことではなく、「最小限の言葉で最大の効果を生み出す」ことに他なりません。短い言葉で、企画を印象に残せる人こそがビジネスにおける「面白い人」なのです。では、どの程度が最小限なのでしょうか。それはずばり「英単語にして2つ」と考えてください。
コンセプトは2つの概念でつくられる。
あらゆるイノベーションは既存の概念の組み合わせだと言われます。どれほど新しく感じられる技術や発想も、結局は2つの要素の掛け算として捉えることができる。言語表現の問題に置き換えれば、よく知られた2つの単語を組み合わせることで、大体の新しいものは表現できるということなのです。だからこそ英語圏では、いいコンセプトは英単語で2つまでだと説明されることがあります。
例えば、トランジスタラジオを生んだソニーの有名なコンセプトは「ポケットに入るラジオ」でPocketable Radioという2単語。スターバックスの「第3の場所」もThird Placeで2単語で表現できますね。
なぜ2単語を目指すのでしょうか。もっとも根本的な理由は、人がいちどに認識できるのはせいぜい2つの概念だということです。
例えば「ポケットに入る完全防水ラジオ」、「ラテが自慢の第3の場所」とすると、焦点がぼやけて分かりづらく感じませんか? 3つ目の概念を加えるだけで、急激にコンセプトの精度が落ちてしまうのです
もちろん英語圏と全く同じルールを日本語に適応し、コンセプトのすべてを日本語の「2単語」で表現するのは無理があるでしょう。「てにをは」によって細かくニュアンスを調整できる日本語の良さを犠牲にするのももったいないことです。それでも構成要素としては大きく「2つの概念の組み合わせ」を目指しましょう。
コンセプト力が、あなたのプレゼンを「面白く」する。
一般的に、お笑いでは「オチ」がない話はつまらない、とされます。ビジネスでは「つまり」がない話こそつまらない。1時間かけて説明するプレゼンであっても、1分で伝えるエレベーターピッチと同様に、たったひと言で、つくりたい商品や挑みたい事業の核心的な部分を伝えられるよう準備しておくべきです。それがあなたの話の軸になります。プレゼンや資料は、2単語にまとめるクセをつけましょう。これを習慣化するだけで、コンセプトメイキングの基礎を鍛えることができます。
このほかにも、『コンセプトの教科書』では、発想法から表現法まで、コンセプトづくりを超具体的に解説しています。