また、そこで飯を食っている当事者がいるので大きな声では言いにくいが、ファンドには組織が付随していて、偉い人のいわゆる天下りの受け皿になるとともに職員を抱えるコストが発生している。

 何が言いたいか。わざわざ「大学ファンド」を作った以上、民間ではできないような運用を行ってこそ、その意味があるということだ。

大学ファンドの
「素人丸出し」の運用方針

 さて、「日本経済新聞」(7月7日)によると、大学ファンドの運用資産比率は、「グローバル債券」が55%、「グローバル株式」が17%だという。また、記事には「初年度は財政基盤の安定性を優先するためにリスクの高い資産の比率を低く抑えた」とある。

 筆者は、この記事を見て絶望的な気持ちになった。

 グローバル債券、グローバル株式で配分を考えているのは、グローバルに資金を運用している海外の有力大学の資産運用を意識したものだろう。これは良かろう。

 しかし、なぜ、(1)債券を55%も持つ必要があり、(2)初年度は財政基盤の安定性を優先する必要があったのか、が意味不明だ。

 同ファンドの22年「業務概況書」には、「運用元本の約9割が財政融資資金からの借り入れであり、自己資本比率が低い財務構造であることから、財政融資資金の償還や国際卓越研究大学等への長期的・安定的な助成に影響が出ないよう、リスクを低めにコントロールしたためです」との説明がある。

 時によって変化するが外国債券は株式の半分くらいのリスクがあり、どのくらい安全運転になっているのかとも思うが、リスクに対する期待リターンの効率が致命的に悪い。最初から無駄なく運用して、資本が足りなくなりそうなら政府と話を付けるのがファンドのトップの役割だ。それにしても、一定のリスクは取っているわけで、その中身の大半がグローバル債券という運用センスには泣ける。

 株式への投資比率を小さく抑えたのは、株価は変動が大きく、かつ分かりやすいので、注目を集めるに違いない初回、2回目辺りの運用成績で大きなマイナスを作る可能性を排除したかったためだろう。「気持ち」は分からなくもないが、気持ちで運用方針を左右していいのは、素人の世界までだ。

 意思決定として見たときに、数カ月といえども機会損失は問題だ。基本ポートフォリオを作っているはずだから、その状態を速やかに達成すべきだった。

 債券の55%と株式の17%を足しても100%に大幅に足りず、その他の資産構成がオルタナティブ投資0.6%、短期資産(預金等)27.6%となっているのは、基本ポートフォリオに沿った資産構成割合を10年以内のなるべく早期に実現するという方針であり、その途中であるためだ。しかしこの状態にあって既に55%もグローバル債券(主に外国債券)を持っている状態が、相当におかしい。資産運用の主旨は、適切にリスクを取ってリスクプレミアムを効率良く獲得することにある。