石油ムラ 大異変#4Photo by Masataka Tsuchimoto

ガソリンスタンドは1994年度の約6万店をピークに、人口減や後継者問題、自動車の燃費向上などの逆風でほぼ半減した。今後もガソリン補助金の打ち切りや電気自動車(EV)普及が見込まれており、将来的には1万店割れを予想する識者もいる。特集『石油ムラ 大異変』(全5回)の#4では、斜陽のガソリンスタンドにとっての活路を示すとともに、生き残るのは誰なのかを占う。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

全国のガソリンスタンド
2022年度末で2.8万店まで減少

 廃墟と化した元ガソリンスタンド、居抜きで別業態となった元ガソリンスタンド――。

 幹線道路沿いで見慣れた景色となったのもそのはずで、石油元売り大手3社(ENEOSホールディングス〈HD〉、出光興産、コスモエネルギーホールディングス)系列を中心とした全国のガソリンスタンドは2022年度末で2.8万店。これはピークだった約6万店(1994年度)の半数以下なのだ(次ページ図表参照)。

 背景には、後継者問題、施設の老朽化、自動車の燃費向上などがある。そして、近い未来には電気自動車(EV)の本格普及が追い打ちをかけることは確実な情勢だ。

「全国のガソリンスタンドは約1万2000店まで減少するかもしれない」

 ENEOS系列の特約店関係者は数年前、あるENEOS首脳クラスとの酒席でそのような見通しを聞いたという。有識者の中にはさらに踏み込んで1万店割れを予想する者もいる。

 いずれにせよ、今後さらに劇的に数が減るという共通の危機感が業界内で共有されている。

 足元ではENEOSが直営店を相次いで閉鎖したことが、業界内で話題となっている。これまでの石油元売り会社同士の合併・統合により、ガソリンスタンド数でENEOS系列が半数近くとなり、エリアによってはENEOS系列同士で客を奪い合う“共食い”が発生するようになった。ENEOS直営店の相次ぐ閉鎖は、その解消に動いているとも、地価が高騰している今こそ売り時とみて動いているとも捉えられる。

 さて今後のガソリンスタンド減少のトリガーや節目は何か。有識者やガソリンスタンドの経営者の見立てなどを基に明らかにしていく。そして、ガソリンスタンドが生き残る条件は何なのか。ローソンとENEOSの“幻の提携”をきっかけにガソリンスタンド業界で起きている待望論とは。