主なリスクが為替リスクと金利変動になる外国債券に大きく傾斜した資産配分を作ったのは、いかなる理由に基づくものか理解しにくい。素人並みの「インカムゲイン狙い」ではないのか。

 上昇しつつあった先進国の債券の利回りが魅力的に見えたのかもしれない。ところが、利回りは不幸にも「上昇しつつあった」ので、円安の環境にもかかわらず含み損が発生したのが、おおよその経緯だろう。どこかの地方銀行の有価証券運用のようだ。

日本の金融界でインカムゲインは
「カモを釣る餌」

 近年の円安気味な為替レートの推移に慣れていると、金利の高い国の外国債券の利回りが円ベースでも獲得可能に思えるのかもしれない。しかし、金利と為替の市場は原理的にはセットで動いており、見かけ上高い外貨の名目金利を円ベースでも高めの期待リターンだと見ることは危険だ。外国債券は長期的に「為替リスクがあるのに、期待リターンが高いとはいえないアセットクラス」である可能性が大きい。

 今後、先進各国の利上げが終了すると、債券利回りが低下する(債券価格が上昇する)時期を迎える楽しみがあるが、同時にその環境は為替レートが円高に振れやすい状況でもある。「グローバル債券」は、気苦労の割にもうからないのではないか。同情を交えつつ忠告しておく。

 推察するに、グローバル債券のインカムゲインが助成と組織運営の費用を賄う上で魅力的に見えたのではないか。ファンドの会計ルール上は、債券のクーポン収入や株式の配当は実現益の一部として「運用益」にカウントされて、債券・株式の価格下落があった場合は「含み損」として繰り越されるのだろう。売却益が出るかどうかは不確実だから、確実なインカム収入がほしい。いかにも愚鈍な素人が考えそうな運用方針だ。

 過去を振り返ると、かつての生命保険会社の運用における「直利志向」を代表として、インカムゲインに対する過剰評価はプロ、アマを問わず日本の資産運用をゆがめてきた。個人投資家は「毎月分配型投資信託」のばかばかしさを思い出すといいし、機関投資家が個人よりも立派かというと、そうでもなかった。はっきり言うと、日本の金融の世界では「インカムゲインは、カモを釣る餌」なのだ。

 為替リスクなしで安定的に稼げる円の金利が低いことは、半ば素人同然と思える大学ファンドの運用にはまことに気の毒なことだ。しかし、せっかく新しい資金を運用するのだから、会計ルールも含めて検討する必要があるかもしれないが、せめてインカムゲインにこだわるようなことのない、合理的な運用方針で運営できないものか。