夫婦の場合の受け取り方
大原則は「寿命」
このパズルは単身者の場合であれば、考えるのは自分のことだけだから比較的容易だ。ところが夫婦の場合は、少し状況が違ってくる。夫婦であってもお互いが望むライフスタイルは必ずしも同じではないだろうし、定年後の暮らし方についても意見が異なるだろうから、夫婦間で十分な話し合いをしておくことが大事だ。
ただ、それを考える上でキーになるのは、夫婦2人でいる間はともかく、どちらかが先に亡くなった場合の後の生活だ。妻が先に亡くなるというのは夫にとって精神的なショックは大きいだろうが、経済的にはあまり影響がない場合が多い。
これに対して夫が先に亡くなった場合、経済的な問題がとても重要になってくる。一般的には男性と女性の平均寿命を比較すると女性の方が6~7年長いし、どちらかと言えば夫の方が年上という夫婦が多いだろうから、だいたい妻一人の期間は10年ぐらいある、と考えておいた方がいいだろう。
そう考えた場合、夫婦で年金を受け取る場合の一つの有力な方法は、「夫の年金は通常の65歳から受給を始め、妻の年金は最長の75歳まで繰り下げる」というやり方である。この方法が良いと思われる理由は三つある。
(1)夫よりも長生きする可能性が高い妻の老後年金収入を最大限手厚くできる(84%増)。共働きで妻も長い間厚生年金に加入していた場合は、さらにその効果は大きくなる。
(2)夫が繰り下げしても遺族年金は繰り下げ前、夫が65歳時点での金額がベースとなるため、遺族年金を受け取る妻にとっては「夫の繰り下げ」はそれほどメリットがない。
(3)年の差が大きい夫婦の場合、夫が厚生年金を繰り下げると年間39万円ほどの加給年金を受け取ることができなくなる。
こうした理由から、夫婦で年金の受け取り方を変えるというのは有力なやり方ではある。ただし、これがどんな場合でも一番良い方法とは限らない。繰り返しになるが、あくまでも老後のライフスタイル、ライフプランを考えてパズルのピースを組み合わせるというのは最も有力なやり方だろうと思う。
パートナーのいる人は特に、自分たちにとってベストな受け取り方はどうすべきかということを、ぜひ二人で考えてもらいたい。