「お金」大全 #14Photo:PIXTA

2024年は5年に1度の公的年金の財政検証の年。それに合わせて年金制度改革が実施される。その柱は基礎年金の給付水準確保だ。厚生年金からの財政支援、加入期間の40年から45年への延長が検討されている。特集『「お金」大全』(全17回)の#14では、これらが盛り込まれると、年金給付額はどうなるのか試算した。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

給付額が低下し過ぎる基礎年金
水準確保に向けた二つの改革案

 2024年は5年に1度の公的年金の財政検証の年である。24年に向けて、制度改革の議論が始まっている。最大のテーマは基礎年金=国民年金の水準確保だ。

 6万4816円。これは、国民年金に40年間加入して受け取る現在の受給金額(月額)だ。これだけでは、老後に安定した生活を送れないのは明らか。国民年金は自営業の人向けに創設された年金であり、高齢者になっても働くことが前提になっている。

 しかし現在は、厚生年金に加入できない非正規雇用の人たちも加入している。加えて、現行制度では、給付水準がさらに切り下がっていく。それは、「マクロ経済スライド」という調整機能が04年に導入されたためである。

 これは平均寿命の伸び率と公的年金の被保険者数の減少率の合計に合わせて、給付水準を抑制していく仕組みだ。少子高齢化で保険料を負担する現役世代が減って、年金を受給する高齢者が増える。そのままでは年金財政は破綻してしまう。破綻を回避するためのシステムである。

 04年のマクロ経済スライド導入時、国民年金に対する適用期間と厚生年金の報酬比例部分に対する適用期間は同じだった。しかし現在、両年金の適用期間は大きくずれている。19年度の年金財政検証で示された六つの経済前提のうち、現実的な前提である「ケースV」で見ると、適用期間は、国民年金が58年度まで、厚生年金の報酬比例部分が32年度までだ。

 公的年金は現役世代の賃金や物価の増減率に応じて給付額を調整する。ところが、デフレや賃金の伸び悩みが続いたことで、給付額は増えないどころか場合によっては減少した。その場合、マクロ経済スライドによる減額措置は適用されない。

 結果として、財政状態が良くない国民年金(基礎年金)への適用期間が、厚生年金より長くなった。それは、国民年金の方が厚生年金より水準低下の度合いが大きいことを意味する。

 そこで、年金給付水準の低下に歯止めをかける二つの案が議論されている。次ページ以降、改革案の内容と、案に基づいた試算結果を紹介する。