サウナの入り方に戸惑う初心者から、サウナ慣れしてととのいにくくなってきた熟練サウナーまで!それぞれに合わせた「究極にととのう」ための入り方を、自らもサウナーの医師が解説した書籍「医者が教える 究極にととのう サウナ大全」が発売に!日常のパフォーマンスをあげ、美と健康をレベルアップする「最高のサウナの入り方」を、世界各国のエビデンスを元に教えます。この連載では本書より、一部を抜粋してご紹介します。

「サウナでととのう」のは体のバグ? 摩訶不思議な「ととのい」の正体とは?イラスト:「医者が教える 究極にととのう サウナ大全」より©ヤギワタル

「サウナでととのう」の正体とは?

「ととのう」という言葉。耳にしたことがある人も多いと思います。

 サウナに入った人が、恍惚の表情を浮かべながら「ととのった~」と口にする、あれです。

「ととのう」というのは、簡単に言うと「サウナに入ったことで得られる心地よい感覚」のことを指します。

 とはいえ、「結局何なの?」と思う人もいるでしょう。

 私自身、サウナの研究を始める前は「なんだそれ?」と思っていました。

 でも、サウナが大好きになり、医師としてサウナが体に及ぼす影響について研究を重ねた結果、わかったんです。「ととのう」の正体が。

 人が「ととのう」とき、体にどのような変化が起き、それによって何を享受できるのか? そのメカニズムを医学的に紐解いていきましょう。

サウナで「自律神経」を大いに刺激する

「サウナに入る」と言っても、サウナ室に入るだけでは足りません。

 サウナ室に入った後、水風呂につかり、外気浴(休憩)をする。この一連の流れを通じて自律神経を大いに刺激することが、ととのうためのポイントです。

 自律神経は、人体が生命活動を維持するために働いている自動運転システムです。心臓を動かしたり、血管をコントロールしたり、体温を調節したり。意識しないでも勝手に動いているものは、基本的に自律神経によって制御されています。

 自律神経は「交感神経(興奮・緊張したときに活性化する)」と「副交感神経(リラックスしたときに活性化する)」に分かれており、相反する働きをしています。例えば、交感神経が活性化すると心拍数は上がるのに対して、副交感神経が活性化すると心拍数は下がるという具合です。基本的には様々な器官を、交感神経と副交感神経が二重支配していて、TPOに応じてバランスを取り合っています。そして、この2つこそが「ととのう」を紐解くカギとなります。

サウナ室、水風呂で交感神経、外気浴で一気に副交感神経優位に

 サウナ室に入ると、最初は「温かい」という気持ちよさを感じるため、副交感神経が優位になります。しかし、すぐに「熱い!」と感じるため、交感神経が優位になります。

 サウナ室を出るといったん元に戻るものの、水風呂に入ると「冷たい!」となるため、再び交感神経が優位に。さらにこのとき、体は過酷な状況に対応するためにアドレナリンというホルモンを出して興奮状態にあります。

 そして、外気浴(休憩)を行うと体は「危機的状況を脱した」と安堵し、一気に副交感神経優位になります。

 これは、ふだんストレスフルな生活を送っている現代人には、なかなか到達できないレベルのリラックス状態です。なぜなら、直前まで交感神経優位に引っ張られていた分、反動をつけて大きく副交感神経に傾くからです。