「このマンションを買って、5年後に売ったらどうなりますか?」。筆者の元には、日々こうした相談が舞い込んでくる。同様の疑問を持つ人が最近かなり多いようなので、今回は「5年後の含み損益」を算出するための基礎的な考え方を皆さんに伝授する。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
「将来の含み損益はどうなる?」
よくある問いに対する筆者の答え
筆者は顧客などから、「このマンションを購入したら、5年後の含み損益はどうなりますか?」という質問をよく受ける。
この質問に答える上では、「買いたいマンションの価格が、適正価格より高いか安いか」を割り出すことが重要になる。
なぜかというと、仮にその物件が適正価格より500万円高ければ、購入者はそれだけ損することになる。いわゆる「高値づかみ」だ。新築でも中古でも適正価格は算出できるので、その適正価格と価格表を比較したら、その差分が損益に直結する。
そこで、筆者が主宰する無料会員制サイト「住まいサーフィン」では、「沖式新築時価」という指標を新築単価の割安度の判断基準として算出・開示している。この時価は、周辺の成約中古事例から算定しているものだ(首都圏の新築物件全件が対象)。
どんな新築物件も、竣工から1年たてば中古扱いになる。そこで、周辺の中古物件の取引価格を基に、想定される適正な新築価格を査定しているのだ。こうした指標を使って価格の適正度を見ていくと、新型コロナウイルス禍以降は買い手が増えたこともあり、適正価格より5000万円も高い物件も出る始末なので注意が必要だ。
また、一概に新築といっても、実は各住戸(各部屋)によって割高・割安が変わってくる。同じマンション内でも、面積・階数・向き・角住戸などで価格差が付くのだ。そこで「住まいサーフィン」では、顧客などから各住戸の価格表を入手し、相対的に安い部屋を特定している。
具体的には、過去の平均値を基に「1階の違い」で価格が何%変わるかを算出し、特定の物件の価格差がそれよりも高いかどうかを判定している。これを「住戸比較レポート」と呼び、当社では価格表を提出してくれた方などにプレゼントしているのだが、階が一つ違うだけで数百万円の差が出ることはよくある話だ。
不動産会社による新築物件の値付けには、それだけ“癖”があるのだ。