仕事を抱え込み、締め切り間際に「実は…」と駆け込んで周りに迷惑をかける部下は、どの職場にもいる。つい、怒りが爆発したり、嫌みを言いたくなったりするが、これはリーダーの信頼が失墜する「損する」パターン。賢いリーダーは、そんな部下すら動かし、最終的に得をする。では、どんな伝え方をするのか? 3万人のリーダーを育ててきた吉田幸弘氏は、次のようにアドバイスする。
部下は、「できないと思われたくない」から抱え込む
期日ギリギリになって、「すみません。実はまだ……」と報告してくる「仕事を抱え込む部下」はどの職場にもいます。こうした部下の対処法として、「20日までに中間報告をしてほしい」といった具合に、中間報告のマイルストーンを決めておくリーダーは多いでしょう。
ただ、仕事を抱え込みがちな部下が、自ら率先して中間報告をしてくるかどうかは、はなはだ疑問です。そんなとき、多くのリーダーは「大丈夫、どれくらい進んだ?」と聞くのではないでしょうか。
しかし、賢いリーダーはこんな聞き方をしません。
なぜなら、「大丈夫?」と聞かれれば、多くの人は「大丈夫です」と答えてしまうからです。つまり、イエスの回答に導く形式だけの確認質問になるわけです。また、上司から「できない部下」という烙印を押されたくないがために、部下が無意識に嘘をつく可能性があります。
では、仕事を抱え込む部下には、どのような言葉をかければよいでしょうか。それは、「資料の何ページ(どの工程)まで進んだ?」と聞いて、部下が答えたら「見せてみて」と言うことです。
どこまで進んでいるか具体的に答えるしかなく、正確な回答になります。ただし、こうした進捗確認はリーダーにとって重要であるものの、部下がその重要性を理解しているとは限りません。
そこで、部下に中間報告が意味あるものだと思ってもらう必要があります。リーダーは、次のように伝えてみてはいかがでしょうか。
「フォローしたいから、どの工程まで進んでいるか教えてほしい」
「もし進んでない場合も、一緒に解決の手伝いをしたいから教えてほしい」
「方向性が違ってやり直しになったら、Cさんの時間を無駄にして悪いから教えてね」
あくまで「部下のために中間報告がある」と伝えるようにします。それによって、「自分ごと」に感じてもらうのです。
結果、中間報告がリーダーのためではなく、部下にとってメリットのあるもの、意味のあるものと感じ、報告の質も上がってくるでしょう。悪い進捗状況であっても、リーダーは怒らないことに留意してください。
部下が仕事を抱え込むのは、遅れを報告することで、怒られたり、評価を下げられたり、失望されることを恐れるからです。日頃から「正直に話しても怒られない」「評価を下げられない」といった心理的安全性を担保しておく必要があります。
手遅れにならないためにも、報告・連絡・相談、いわゆる「ホウレンソウ」がリーダーのためだけでなく、部下の身を守るものであることがわかる伝え方を意識してください。