「なぜ?」で部下を追い詰めていませんか?

 ここまでお読みになれば、いかに怒らないか、部下に「圧迫感を与えないか」が、部下に心を開いてもらうカギだということが、わかってもらえると思います。ここで、部下に圧迫感を与える代表的な問いかけを紹介しましょう。それは、「なぜ」(WHY)と聞くことです。

 ある日、リーダーAさんの職場で、重要な契約内容が書かれたメールを、部下のCさんが違うお客様に誤送信するミスが起きました。「なぜ、ミスしたの?」。真面目なAさんは、ミスをした部下のCさんにこう問いかけます。Cさん自身に、原因に気づいてほしいと考えたからです。

 しかし、部下から返ってくるのは「すみません」という言葉ばかり。それもそのはず。「なぜ」という言葉には、ミスした人を非難するニュアンスが含まれていて、圧迫感があるからです。賢いリーダーは、部下に「なぜ」とは問いかけません。

 トヨタやリクルートなどの人材輩出企業では、「なぜ」を5回繰り返すそうですが、この場合の「なぜ」は、あくまで「自分自身への問いかけ」です。

「なぜ(WHY)ミスをしたのか?」の代わりに、「どうしたら(HOW)ミスが起こらなくなるのだろうか」という聞き方はいかがでしょう。変えようのない「過去」ではなく、変えることのできる「未来」に視点を移すことで、前向きになれます。

 しかし、この問いかけにも欠点はあります。「どうしたら(HOW)」という聞き方をされても、ゼロベースで改善策を考えて答えるのは容易ではないからです。部下はプレッシャーを感じ、その場しのぎでテキトウに答えてしまいます。

 では、「何が(WHAT)要因でミスが起きたのか?」という問いかけはどうでしょうか。出来事に焦点を当てているので、そこまでプレッシャーを感じさせません。

 ただし、「何が」(WHAT)には、部下がミスの原因をひとつに絞るリスクがあります。本当は他に原因や効果的な解決策があるのに、見落としてしまうのです。

 問題解決をするには、まずは問題の原因を広げて考えさせることが大切です。ミスの要因を考えられるだけ部下に挙げてもらい、その選択肢から狭めていく、という順番を取る必要があります。

 そこで、「どこ」(WHERE)を使います。「どこに原因があるのか、一緒に洗い出してみようか」と声をかけてあげるのです。

 メールの誤送信の例で言えば、
・集中力の低い昼食後に、重要なメールを送っている
・送信前に、宛先を確認していない
といった原因が部下から出てくるのではないでしょうか。

 上司の問いかけによって、部下に気づかせることができます。部下から具体的な回答がなければ、「メールを送る工程を分解してみようか」などとヒントをあげて、部下の思考を促してあげてください。