3月上旬にも国会に提出される予定の「耐震改修促進法」改正案が波紋を広げている。
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この法案は、南海トラフ地震や首都直下地震といった、近い将来、必ず来るといわれている地震の被害を最小限に抑えるため、大規模建築物や住宅の耐震診断を義務付け、問題がある場合には改修を促すものだ。
診断義務化の対象となるのは、旧耐震基準下で建てられた不特定多数の人が出入りするホテルや百貨店、病院、そして災害時に避難所となる学校といった「指示対象特定建築物」のうち、延べ床面積5000平方メートル以上の物件。原則オフィスビルは対象外だが、後述するように自治体が指定する緊急輸送道路沿いの建物は対象となる。
ちなみに現在、対象となっている建築物のうち、旧耐震基準下で建てられたものは全国に9644棟あり、耐震診断を実施済みのものはいまだ約6割だ。
また、診断済みの建物の76%は「耐震性なし」と判断されており、今後、法案が国会を通過すれば相当数の建築物が対応を迫られることになる。
一方で、費用面の手当ては厚くなる。耐震診断の国費助成は、従来の3分の1から2分の1に、耐震改修についても従来の11.5%から3分の1に引き上げられる方針だ。
とはいえ、今回の改正案にビルオーナーたちは戦々恐々としている。というのも、耐震診断の結果が公表されるからだ。
既に東京都では、東日本大震災後の2011年4月に、耐震診断が義務化されている。
大震災発生時の緊急輸送道路を確保するため、都が定めた緊急輸送道路沿いにある旧耐震基準で建設されたビルのうち、道路の幅員の2分の1を超える高さの建物については、診断を受けなければならない。