失敗することがストレスになったのではなくて、失敗しないことがストレスになっていた。2019年ワールドカップで超一流のレベルを肌で感じて以降、それが不満であり、不安だった。

 失敗できなければ、僕の成長はここで止まってしまう。もっと失敗したかった。まだまだ成長したかった。

 そのためには新たな失敗できる場所――チャレンジできる場所がどうしても必要だったのだ。居心地の良い場所を離れて、僕のことを誰も知らないタフな環境へ、海外のチームに行こうと考えるようになったのは、僕にとってごくごく自然なことだった。

 そんな時、声をかけてくれたのが、スーパーラグビーの名門チーム、ハイランダーズだった。

 もちろん試合に出られる保証は一切ない。グラウンドの中で自分の力を示してポジションを掴み取るしかなかった。言葉や文化、生活習慣のギャップやハンディがあったとしても、それを跳ね返してみせなければいけない。

 それでも僕は一切迷わなかったし、ためらわなかった。

 もちろん不安がないわけではなかったが、それよりも自信とワクワクする気持ちのほうが圧倒的に強かった。

 トヨタも僕の考えを最大限尊重してくれた。チームマネジメントを考えれば、レギュラー選手、それもキャプテンが1シーズン丸々、チームを離れるというのは痛手だったに違いない。現地で試合に出られず、コンディションを大きく落として帰ってる可能性もあるかもしれない。実際に、当時のヘッドコーチからはチームへの残留を勧められたりもしたが、最後はみんなが快く送り出してくれた。

 その時、ニュージーランド渡航直前に書いたノートを少し振り返ってみよう。

●NZ挑戦へ向けて 2021年2月6日
【Must】
・世界へ、日本人としての力の証明。そして自分の力の証明。
・ハイランダーズで優勝。素晴らしい経験を得る。
・英語能力の向上。
・新たな自分自身を手に入れる。さらなる成長を手に入れる。