4月14日に開業した「109シネマズプレミアム新宿」。座席数を通常の半分以下に減らし、全席プレミアム仕様のシートを採用したこれまでにない映画館は、そのコンセプトと1席4500円/6500円という料金の高額さから大きな話題を呼んだ。なぜ109シネマズはこれほどまでに高級な映画館をオープンするに至ったのか。プライシングをひもとくと、背景にある狙いが見えてきた。(プライシングスタジオ代表取締役 高橋嘉尋)
全国展開するシネコンチェーンが
高級路線ブランド新設のなぜ
1000を超える座席数と巨大スクリーンを持つ日本最大級の映画館として、60年近くにわたって栄華を誇った「新宿ミラノ座」。その跡地に今年4月、ホテルや店舗などが入居する高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」が開業した。
かつて一時代を築き上げたミラノ座の跡地とあって、東急歌舞伎町タワーには大型劇場やライブホールが入居。ミラノ座のDNAを受け継ぐエンターテインメントの拠点として新たなスタートを切ったが、その9・10階にオープンしたのが映画館「109シネマズプレミアム新宿」だ。
運営を手掛ける東急レクリエーションは、全国19カ所にシネマコンプレックスチェーン「109シネマズ」を展開している。今回の109シネマズプレミアム新宿は、既存ブランドを進化させて新たに打ち出したプレミアムブランドの1号店かつ旗艦店という位置付けだ。
新ブランドの特長は、上質な鑑賞環境と徹底されたサービス、そして何と言ってもその料金設定にある。国内における平均的な映画チケット価格が2000円程度であるのに対し、109シネマズプレミアム新宿ではCLASS Aで4500円、CLASS Sで6500円の価格設定とされた。
ここまで高級路線に振り切った映画館は珍しく、情報が発表されるや否や多くのメディアがこぞって報道した。東急レクリエーションはどうしてここまでの高付加価値戦略に乗り出したのだろうか。そのヒントは既存ブランド、109シネマズの価格表にあった。