2023年10月からインボイス制度が始まります。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります(発売は8月2日)。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。
「消費税は全額納める?」インボイスの大誤解!
インボイスに登録する(課税事業者になる)と、「消費税を全額納めないといけない!」と思っている方が意外に多いです。
本来、免税事業者の場合でインボイスの登録をしたとき、年間売上が880万円、うち消費税が80万円だとすると、この80万円を全額納めなければいけないのでしょうか?
そうではありません。
消費税は売上にだけではなく、仕入や経費にも関係しています。売上の消費税を受け取っている一方で、仕入や経費を払うときには消費税を払っているはずです。
受け取った消費税と払った消費税を計算して、その差額を納めます。
売上が880万円(うち消費税80万円)、経費が550万円(うち消費税50万円)だとすると、消費税の原則課税(原則的な計算方法)だと、納める消費税の金額は80万円-50万円=30万円です。
簡易課税という方法を選んだ場合、サービス業なら、80万円×50%(サービス業の率)=40万円となります(サービス業は50%ですが、業種によって率が異なります)。
2026年9月30日の属する期間までで、本来、免税事業者であれば、2割特例といわれる特別なルールを選択することもでき、その場合は80万円×20%=16万円です。
いずれにしても80万円より納める金額は少なくなります。インボイス登録を検討する方にぜひ知っておいてほしいことです。
これからインボイスに登録するなら、どの計算方法がベストかを把握し、納める消費税額を確認しておきましょう。
(本原稿は井ノ上陽一著『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』から一部抜粋・追加加筆したものです)