TikTokのロゴ写真はイメージです Photo:PIXTA

“五感を刺激する”買い物体験で購買意欲を加速させる動画アプリ「TikTok」。世界のアプリランキングでDL数首位、特にZ世代から圧倒的な支持を得ています。SNS市場のトップランナーになったTikTokの成功に迫ります。

「ほしい!」から「購入」までの流れを止めない

 あなたは自宅のホームシアターで、ネットフリックスの映画を鑑賞しています。すると、あるシーンで登場人物の部屋にあるソファに目が留まりました。

「あ、このソファいいな。ちょうどそろそろ買い替えたいと思ってたんだよな……」

 そう思ったあなたがスマートフォンを取り出して映像にかざすと、そこに埋め込まれたタグが画面にあらわれました。それをクリックし、映画に登場したソファの購入サイトに移動したら、価格を確認し、その場で購入のボタンをタップ。明日には自宅に届けられます。あなたは「いい買い物ができた」と満足して、再び映画鑑賞に戻りました――。

 こんな未来が、もうすぐ現実になろうとしています。

 いま、映画の中に登場する商品を画像認識AIによって自動的にタグづけし、映画を観ながらその場で購入できるようにする実証実験が、ある中国テック企業のもとで進められています。

 認知から購買にいたる一連の消費行動において、少しでもフリクション(引っかかり)が生じると、今日の消費者は「購入」のボタンを押してくれません。みなさんにも、少し読み込み時間があっただけなのに、急に買う気が失せてしまったという経験があるのではないでしょうか。

 その傾向は、とりわけ「Z世代」と呼ばれる若者世代に顕著に見られます。何度もスクロールしないと「購入」ボタンにたどり着かないサイトなど、すぐに離脱してしまいます。

 彼らは日々、大量のコンテンツに接しながら、「いいな!」「ほしい!」と心が動いたら、その場ですぐ購入したい欲求を持っています。LTV(Life Time Value)獲得の観点からも、「流れ」を止めない買い物体験をいかに提供できるかが、今日のマーケティングにおける勝負の分かれ目となっています。