自身の被害を映画化するほか
映像業界のハラスメントを告発していた

 この発表で逝去が伝えられている俳優・映画監督とは、7月23日に亡くなったとされる水井真希氏だ。7月28日に親族が水井氏のX(ツイッター)アカウントで明らかにしていた。

 水井氏は1990年生まれで、10代の頃から映画監督の園子温氏や西村喜廣氏に師事。2013年には自分が見知らぬ男性から拉致された実際の被害をもとに企画・脚本を手がけ、監督した映画『ら』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭に入選し、2015年に一般公開されている。また、公開待機中という監督作品『T63』があることがXのプロフィールで明らかにされていた。享年は32だった。

 アカウントでは逝去の発表に続いて、遺族が次のように追記している。

「このTwitterアカウントに関して
言葉や表現が不適切な部分が
たくさんあったかもしれませんが
水井の生きた証の1つとして
一旦このままにさせていただきたいと思います」

 また、水井氏のツイッター(固定ツイート)では、「K」という映画評論家との関係についてつづられていて、「K」が誰なのかが注目された。

急逝の4日後に
投稿の削除命令?

 SNS上では、この「K」が多摩美術大学の准教授で東京ドキュメンタリー映画祭のプログラムディレクターである金子遊氏ではないか?と追及が始まった。

 金子氏は7月31日にブログに「水井真希氏への弔意とツイッター投稿について」という記事をアップ。「K」は「当方を指しているのではないかと思います」とする一方で、「ですが、当方は氏の主張するような違法行為は一切しておりません」と性暴力を否定し、次のようにつづっている。

「不徳のいたすところにより、生前の水井氏から恨みを買う行動(不貞行為、彼女がリストカットをした過去について取材してしまい、彼女の心を傷つけたこと)があったことは事実です。それは道義的に過ちだったと考え猛省しています」

 また、〈経緯〉という見出しで、「警察の任意の事情聴取を一度だけ受けましたが、それきり連絡はありません」と刑事事件となっていないことを強調した。また、2013年、2015年に水井氏と民事訴訟で争った結果、すべて金子氏が勝訴しているとも主張。「当方に対する名誉毀損が認められ、彼女はツイッターの投稿記事の削除を命じられました」としている。

 さらに、水井氏が固定ツイートにしている2022年7月〜12月の「K」に関するツイッター(X)投稿について、「東京地裁は令和5年7月27日に、水井氏による『K』への名誉毀損を認定し、全ての投稿に削除命令が出て仮処分が決定しました」としている。

 これが事実であれば、水井氏が逝去した7月23日の4日後に、投稿の削除命令が出ていたことになる。

 また金子氏は、「上記の不法な投稿記事をリツイートして拡散したり、引用をして投稿した場合など、誹謗中傷は名誉毀損罪に問われる可能性があります」と警告している。

 こういった動きの中で発表されたのが、8月2日の東京ドキュメンタリー映画祭の公式サイトでのコメントだったのだ。