映画祭の協賛会社も
「結果的に加害を黙認するような形」

 東京ドキュメンタリー映画祭を協賛するアジアンドキュメンタリーズも、公式サイトで「性加害に対する弊社の姿勢について」というタイトルのコメントを発表した。

 この中では、「加害者とされた本人は、すでにブログにより裁判等の経緯について説明し、違法行為は否定されておられますが、道義的に過ちがあったと認めています。引き続き本人の真摯な対応と、映画祭としての信頼回復を強く求めます」と、引き続き金子氏の対応を求める姿勢を明らかにしている。

 さらに「私どもは協賛企業としての責任を痛感しております。これまで弊社では、配信する作品を通じて人権を尊重し、性暴力を非難するメッセージを社会に届けてまいりました。しかしながら自社が協賛する映画祭に関して不本意ながらこのような事実があったことを認識せず、結果的に加害を黙認するような形になってしまったことは、被害を受けた方をさらに傷つけ、また社会へ誤ったメッセージを発信することにつながってしまったと、極めて重く受け止めています」とも続く。

 この後にも、近年になって日本の映像業界の中で繰り返されてきた性加害が次々と明らかになっていることに触れ、「誰もが安心して働ける当たり前の環境づくり」を目指すと締めくくられている。

 こういった「疑惑」が取り沙汰された際に、関係する組織がコメントを発表することは少なくないが、東京ドキュメンタリー映画祭とアジアンドキュメンタリーズのコメントは定型文にとどまらず、後悔の念を感じさせるコメントだと感じた。

 一方で、金子遊氏が現在在職する多摩美術大学は、これまでにコメントを発表していない。

 金子氏は、水井氏との間に「不貞行為」があった事実と道義的責任については認めている。水井氏のプロフィールによると、水井氏は2012年当時は21〜22歳であり、大学生にあたる年齢だ。若い学生の多い学びの場において、学ぶ側の心理的安全性に配慮した声明は必要なのではないかとも感じる。