ドナルド・トランプ前大統領は、2020年の米大統領選挙で自身の勝利が盗み取られたと信じていたのだろうか。それは誰にも分からない。彼の思考を解明するのは、パスコードなしにiPhone(アイフォーン)内の情報を引き出すことと同じくらい難しい。しかし、トランプ氏が先の大統領選に関する自身の主張が誤りであると知っていたことを、少なくとも合理的疑いの余地なしに政府が証明するのは不可能だと、同氏の弁護士は述べている。たとえ当時の副大統領、司法省、国家情報長官、ホワイトハウスの弁護士らから誤りを指摘されていたとしても不可能だという。こうした見方には一理あるかもしれない。単に誤りを指摘されただけで人々の信念が変わることは少ない。ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書は、2016年の大統領選でトランプ陣営がロシア側と共謀した証拠はないと結論付けたが、イプソスとロイター通信の19年の世論調査によれば、同報告書について知っていた米国民のうち50%は、調査時点でも共謀があったと信じていた。