歴史小説の主人公は、過去の歴史を案内してくれる水先案内人のようなもの。面白い・好きな案内人を見つけられれば、歴史の世界にどっぷりつかり、そこから人生に必要なさまざまなものを吸収できる。水先案内人が魅力的かどうかは、歴史小説家の腕次第。つまり、自分にあった作家の作品を読むことが、歴史から教養を身につける最良の手段といえる。
直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』
(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、歴史小説マニアの視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】<br />金髪・ピアスの高校時代の意外な行動習慣Photo: Adobe Stock

頭の中は歴史でいっぱい

【前回】からの続き 『振り返ると、中学・高校時代の95%、いや98%は歴史のことで頭がいっぱいだったと思います。もはやいっぱしの歴史オタク、歴史小説マニアです。

中学受験を経験した私は、京都南部の自宅から奈良県内の中高一貫校に通っていました。

学校までの道のりは、徒歩30分、電車30分、徒歩30分の計1時間30分を要します。

毎日“歩き文庫”で登下校

もちろん、文庫本を片手に、毎日読書をしながら登下校していました。

今は歩きスマホが条例で禁止される時代ですが、当時は本を読みながら歩いても注意されず、むしろ二宮尊徳のように勉強熱心だと感心される風潮がありました。

毎日“歩き文庫”をしていた私は、いつの間にか片手でページをめくりながら読むという特技を身につけるようになりました。

金髪・ピアスの高校生時代

文庫を読みながら悠々とクルマを避け、電信柱を回避しながら、往復3時間の読書を楽しんでいたのです。

高校生の頃は髪を金色に染め、耳にはピアスを開けていました。

どちらかというと、ヤンチャな風貌の若者が、電車内で司馬遼太郎の『峠』のような大部の歴史小説を読んでいたのです。【次回へ続く】

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。