師匠に言われた衝撃の一言
忙しいなかで打ち合わせをしなければいけない師匠からは「頑張るのはええねんけど、頑張り方間違えたらあかんで。目的は面白いものを作ることで、量を出すことじゃない」とバッサリ切られました。
私はハッとしました。たしかに、私も「面白い漫才を作る」ことを考えていたはずなのに、いつからか、師匠にたくさんのネタ候補を見せることが目的になっていたのです。
それ以来、私はメモしたことや思いついたことを自分で厳選する時間を打ち合わせする前に設けるようにしました。それまで考えてきたことのエッセンスだけを取り出して、忙しい師匠たちでもすぐにアイデアが伝わるようにしたのです。
すると、師匠からは「ええなぁ、内容にキレがあるわ。これ相当考えたやろ」とそれ以前とネタの方向性は変わっていないのにもかかわらず、お褒めの言葉をいただけるようになりました。
この学びを受けてから、私はNSC(お笑い養成所)で生徒たちに授業をする際、「頑張り方を間違えないように」と口酸っぱく教えています。というのも生徒によっては講師の言うことを間に受けすぎて、講師にウケるネタをつくってきてしまったり、かつての私のように、たくさんのネタをつくってアピールしようとしてしまうからです。
そうではなく、大事なのはお客さんに喜んでもらうことですから、仮に講師が誰一人笑わなくても、劇場で大爆笑を取れたらそれでいいのです。
だからこそ、講師にこう言われたらからと頑張るのではなく、常にお客さんのために頑張りなさいと教えています。
もちろん、そういったことのプロセスとして量をこなすことなどもあるかとは思いますが、量を出してやった感があるからOKは失格です。
どんな仕事にも言えることですが、「何のためにやっているのか」「誰のためにやっているのか」は忘れてはいけません。頑張りが無駄になってしまってはもったいないですから、私と同じ失敗を皆さんが繰り返さぬよう、心に刻んでおいていただけると幸いです。