長らく経済成長率が低迷した日本。その影響は人事に如実に表れていた。特集『部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年』の#16では人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、5人の元・現役人事部長に激変した人事制度と昇進の要件、出世の作法を聞いた。(人事ジャーナリスト 溝上憲文)
●エネルギー大手 元人事部長Aさん(50代男性)
●食品大手 人事部長Bさん(50代男性)
●住宅大手 元人事部長Cさん(50代男性)
●サービス大手 人事部長Dさん(50代男性)
●建設大手 人事部長Eさん(50代男性)
大卒総合職で入社しても
7割が管理職になれないまま定年に
課長・部長になれる人が激減している──。5人の元・現役人事部長が真っ先に口をそろえたのは、管理職は今や「狭き門」になったということだ。
エネルギー大手の元人事部長Aさんは、「20年前の先輩世代は、同期の8割は最低でも課長にはなれた。でも今は4割程度にすぎない。半分以上の人がせいぜい係長止まりで、そのまま定年を迎える時代になった。部長に昇進するのは1割程度。その上の事業部長・本部長クラスの役員は同期で一人もなれる人がいないというのは珍しくない」と打ち明ける。
食品大手の人事部長Bさんも「同期で課長になるのは半分弱で、部長が2割程度。執行役員は数年に1人出るか出ないかであり、社内では“ビンテージ”と呼ばれている」と指摘する。
「もっと少ない」とさらに厳しい現実を語るのは、住宅大手の元人事部長Cさんだ。「部下を持つラインの課長は3割程度、部長は4%程度。同期が100人なら3~4人しか部長になれない」。
サービス大手の人事部長Dさんは、「10年前は同期の半分程度が課長になったが、今は3割ぐらい。部長になれるのは10%程度で、役員になれるのは1%にすぎない」と厳しい出世事情を語る。
つまり、大卒総合職で入社しても7割が管理職になれないまま定年を迎える。入社式で社長が、「会社の将来を背負って立ってほしい」とよく訓示するが、背負うどころか平社員で会社人生を終える人が圧倒的に多い時代に突入したのだ。
管理職になれない人が増えている理由は、年功序列の崩壊と経営のスリム化だ。
次ページでは、人事部長5人に飛び級制度の余波や厳格化された課長昇進のための審査の実態、一方で意外な部長昇進の要件を本音で語ってもらった。