日本では規制によって、通話アプリ、050電話、WiFiから「110番」「119番」通報ができない。アンケートでは9割が「緊急通報ができない状態になることは重大な問題だ」と回答している。この規制撤廃に向けて動き出したのが、消費者担当大臣でデジタル大臣の河野太郎氏だ。マイナンバーカード問題での稚拙なかじ取りに、多くの国民が不安を抱えているが、今回も規制撤廃のはずが新たな参入障壁を作ってしまったという。(イトモス研究所所長 小倉健一)
緊急通報できない理由は
「固定電話の信頼性が損なわれる」から
日本では、今日現在、通話アプリ、050電話、WiFiから「110番」「119番」通報ができない。緊急時に、これでは心もとないという人は多いと思うが、実際に使用できない番号は他にもある。
104…番号案内
110…警察機関への緊急通報
113…電話の故障受付
114…話し中調べ
117…時報
118…海上保安機関への緊急通報
119…消防機関への緊急通報
144…迷惑電話おとこわりサービス
148…非通知着信拒否
177…天気予報
これらの番号が一切使えない。この利用者にとって何のメリットもない規制は、総務省が「今まで長い年月をかけて培われてきた固定電話番号の信頼性が損なわれてしまうことのないよう」にと、2018(平成30)年9月に「固定電話番号を利用する転送電話サービスの在り方」を発表したことが原因だ。
固定電話に長年培われた高い信頼性があったなどとは驚きであり、はっきりいって、国民にとって迷惑な規制としかいいようがない。世界でもあまり聞いたことのないバカな規制である。
そんなことを感じているのは、私だけではないようだ。(一社)日本ユニファイド通信事業者協会が、2022年10月26日~31日に、携帯電話を所有している全国の20~69歳の男女500人に対し、アンケート調査を実施したところ、以下のような結果が出た。
・現状では緊急通報(110番、119番など)ができるのは固定電話(東京03などの電話)と携帯電話だけになっていることに対し、85%の人が、緊急通報の手段はできるだけ多い方が良いと思うと回答
・現在日本では法令で禁止されているアプリ電話やWiFi経由での緊急通報の手段については、「口頭で居場所を伝える必要がある」「口頭で住所、氏名を告げる必要がある」「通話品質が低下する可能性がある」といったデメリットを伝えた上でも、それぞれ、8割以上の人が、多くの手段で緊急通報できる方が良いと回答
・「LINEなどの通話アプリ」「クラウド電話」「050電話」は緊急通報できないという事実を認識している人はそれぞれ、25%、22%、17%の割合にとどまった
・「携帯電話」と「固定電話」に関しては77%の人が緊急通報できると事実を認識していますが、「LINEなどの通話アプリ」「クラウド電話」「050電話」に関しては、「わからない」と回答した人の割合が5割から6割程度
一体なぜこのような規制ができたのか。