15歳から変わる遺伝と環境のバランス、「非行」は環境の影響「犯罪」は遺伝が関わる写真はイメージです Photo:PIXTA

 行動遺伝学者の安藤寿康氏は、たばこ、アルコール、麻薬などの物質依存や非行や犯罪に関する遺伝と環境の影響について、家庭環境の影響があるものも少なくはないと示している。同氏の新著『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、環境による非行と犯罪への影響と遺伝子の関わりを紹介する。

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遺伝と環境が逆転する15歳

 非行は犯罪とはまた少し違うメカニズムがあるのではないかと思われます。ここで、非行と犯罪は区別する必要があります。非行とは万引きや不純異性交遊や未成年飲酒・喫煙など、若いときのワルな行為、いってみれば若気の至りでやってしまった過ちです。こういう行為は、悪い友達の仲間になってしまったり、あるいは住んでいる地域にそうした行為が起こりやすかったりすると、なびいてしまいがちです。

図表:遺伝と環境が様々な形質に与える影響遺伝と環境が様々な形質に与える影響(AERA 2019年7月29日号より)
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 一方、犯罪とは強盗、殺人、詐欺といった、もはや若気の至りで済まされない、正真正銘の悪事、反社会的行為のことをいいます。行動遺伝学が共有環境の影響の多さを示しているのは、このうち若気の至りの方の非行です。15歳を境に、それ未満だと共有環境が多いのに対して、15歳以上になると遺伝の影響が多くなり、逆に共有環境の影響はほとんどなくなります。酒やたばこも飲めなければ一人前ではないというピアプレッシャー(友達どうしの同調圧力)が働きやすい環境に置かれれば、未成年喫煙、未成年飲酒も、それをすることが勲章だと思わされるでしょう。