レビュー
児童精神科医として精神科病院や医療少年院での現場経験が豊富な著者は、70万部超のベストセラーとなった前著『ケーキの切れない非行少年たち』で世の中に問題提起をした。本書『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』はその続編として、前作で書ききれなかったことやその先にあるべき支援、適切な支援につなげるための知識とメソッドについて書かれている。
自己責任論がまかり通っている現代。頑張っている人なら応援する、できない人はもっと努力すべし、というのが多くの人の常識だろう。たしかに頑張っている人は応援したくなる。たとえば、テレビの特集でアスリートが努力している姿を見ると感情移入し、ファンになることも多い。
しかし著者は、そうした風潮に待ったをかける。頑張る人が賞賛される陰で、頑張りたくても頑張れない人たちは確実に存在するし、そういう人たちこそ本来は応援・支援しなくてはならないのではないだろうか、と。しかも、このような人たちが助けを求めることはほとんどない。
現場を知る著者だからこそ、頑張れない人たちの本音や支援者の葛藤などについても丁寧に書いている。支援には誰にでも当てはまる正解があるわけではないし、すぐに結果が出るわけでもない。もしかしたら、結果が出ずに諦めてしまうこともあるかもしれない。しかし、気づかれにくい問題だからこそ、真に支援すべき人たちに目を向ける必要がある。そんな現実に気づかせてくれる一冊だ。(大島季子)