人はどうすれば幸せになれるのか――。答えのない問いのように思えるが、こうした疑問を研究するのが「幸福学」という学問だ。「幸福学」の第一人者・前野隆司氏が、経済的独立をして早期退職を果たす、新たな価値観「FIRE」と「幸せ」の関係について解説する。本稿は『幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く』(前野隆司、大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。
幸せの研究が進んでいるのに
幸せではない人が多い理由
あなたはどんな人生を送りたいでしょうか。
すべての人は、幸せに生きるべきだと思います。日本国憲法第3章には、国民の権利として「幸福追求権」が掲げられています。すべての人は、その個性が尊重され、それぞれ幸せに生きる権利を有しているのです。しかし、どうすれば幸せになれるのかを知らない人が多すぎる。そこでわたしは、「幸福学」(well-being and happiness study)という学問に関わり、どうすれば人が幸せになるかについての研究をおこなってきました。
幸福学の研究により、どうすれば人は幸せになれるかが、学術的にかなり詳しくわかっています。本も出ています。しかし、それでも幸せになれない人がいる。なぜでしょう。幸せになれないポイントは百人百様であり、どの助言が役に立つかは、一人ひとり違うからです。
本稿には、一人の青年が登場します。彼には、普段なかなか口にできないような疑問や悩みを、できるだけ遠慮なく語ってもらいました。それにわたしがアドバイスすることを通して、幸せになるための方法を学んでもらうという形です。もちろんこの青年もまた、百人百様の悩みを持つ人々のうちの一人に過ぎません。それでも、幸福の定義、恋愛、仕事、お金、友人関係と、時には脇道に逸れながらも多岐にわたるテーマについて深く話すことで、どんな読者にもどこかしらヒントを得られるよう、意識したつもりです。なお、この青年は、実在の人物がモデルになっていますから、リアリティーがあると思います。彼が成長していく様がとても愛らしいですので、その様子も楽しんでいただければ幸いです。