長い休みを経て
大切なものを見つめ直す

前野隆司 著
青年:サバティカルってなんですか?
先生:サバティカルとは、ある一定の年数をつとめた大学教員が、数カ月から1年くらいの長期休暇をとる制度です。どう時間を使うかは人それぞれですが、海外の大学や研究機関に赴任する人が多いですね。日本ではあまり知られていませんが、アメリカやヨーロッパでは一般的な制度です。
大学教員にかぎらず、もし可能であれば、あなたもいつかサバティカル的に休んでみるといいかもしれませんね。わたしの知り合いは、もし生活に困らないだけの資産があったら、保護犬や保護猫を救うボランティアがしたいといっていました。そういう目的があれば、FIREしても幸せになれると思います。
青年:そこまで立派な目標があったわけではありませんが、実はぼくにも、似たような時期がありました。最初の会社をやめたあと、失業保険をもらいながら半年ほど休んでいた時期があるんです。当時たまたま同時期に仕事をやめた友人と、毎日のように会って、次の仕事をどうすべきか語り合っていました。
先生:そうでしたか。それで、目的は見つかったのですか?
青年:いえ、見つかりませんでした。いま思い出すと笑ってしまうのですが、あるときなどはユーチューバーを目指そうということになりました。ジンバルやマイクまで買って、スマホのカメラでくだらない動画を撮影し、アップロードしたりして。もちろんすぐに頓挫しましたよ。けっきょく互いに会社員に再就職しましたが、いまとなってはいい思い出です。
先生:あなたにもそんな友人がいたのですね。そのように目標を持って互いに高め合える友人は、かけがえのないものですよ。