ガソリン代の高騰が止まりません。15年ぶりの高値とあって、悲鳴を上げているドライバーや企業も多いのではないでしょうか。日本では原油の9割を中東から、天然ガスの約10%をロシアから輸入しています。ロシアによるウクライナ侵攻で、自国のエネルギー源を外国に依存することのリスクが明らかになったこともあり、世界的に脱化石燃料、再エネルギー発電(再エネ)の流れが加速しています。しかし、脱炭素・再エネ発電を進めることで新たな問題も浮上してきています。ドイツ在住ジャーナリストの熊谷 徹さんの著書『次に来る日本のエネルギー危機』(青春出版社)から、脱炭素・再エネ発電に潜むリスクと問題点に迫ります。
再エネ拡大で中国依存が高まるジレンマ
前回、ロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー地政学が根本から変わったこと、そして特に欧州では再生可能エネルギー(再エネ)の拡大によって、一国・一地域への依存度を減らす動きが加速していることをお伝えした。
ただ、ここで一つ大きな問題がある。ドイツなどEU諸国が進めている再エネ拡大や経済の脱炭素化も、EU域内で採取できる資源や材料だけで進められるわけではない、という点だ。陸上風力発電設備のタービンや、太陽光発電パネルなどを製造するには、中国など外国からの天然資源が不可欠なのである。
たとえばモビリティーの脱炭素化で重要な役割を果たすBEV(電池だけを使う電気自動車)のリチウムイオン電池の世界市場では、中国のシェアが約80%に達する。