上司は社員のどこを見て評価しているのだろう? そう気になったことはないだろうか。
上司は部下に何を求めていて、どうすれば出世につながるのだろう。
そこで参考になるのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズムが、見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回、本書を読み解くのは、企業現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント・横山信弘氏だ。最新刊『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』や衝撃のデビュー作『絶対達成する部下の育て方』などのベストセラー作家でもある横山氏は、『時間最短化、成果最大化の法則』をどう読み解いたのか。連載8回目は「部下に絶対にやらないでほしいこと」をテーマに話を聞いた。(構成・川代紗生)

上司 部下 困るPhoto: Adobe Stock

人が成長するのは「業務経験」が7割

──「自分に子どもができてはじめて、親の気持ちがわかった」などとよく言いますが、

 職場においても「上司になってはじめてわかること」がたくさんあるのではないかと思います。

 そこで「上司」経験の長い横山さんにこそお聞きしたいのですが、「部下に絶対にやらないでほしいこと」ワースト1位は、何ですか?

横山信弘(以下、横山):オンラインサロンに入る、SNSのコミュニティに所属する、高額なセミナーに参加するなど、無駄な自己研鑽や、自己投資ですね。

──無駄な自己研鑽ですか!

横山:なんというか、見ていてもどかしくなりますね。もっと効率よく成長できる方法があるのにと言いたくなってしまいます。

 一つ、人材育成にまつわる有名な法則をご紹介したいのですが、「ロミンガーの法則」というものがあります。

 これは「70:20:10の法則」とも呼ばれていて、人の成長に影響をもたらすのは、

「業務経験」が7
「他者からの薫陶」が2
「研修・読書」が1

 というもの。つまり、成長につながる要素のほとんどは、労働時間内にできることにある、ということ。ふだんの仕事や、上司・先輩の指導から得られる学びは、たくさんあるのです。

 自分がやるべき仕事は真面目にやらず、成果も出さないのに、オンラインサロンやセミナーには積極的に参加し、成長した気になっている。

 そういう人を見ると、ああ、もったいないなあと思ってしまいますね。わざわざ自腹を切らなくても、社内のリソースを活用すればいいのに! と。

オンラインサロンに参加する前にチェック!
労働時間内で得られる「学び」のチャンス

──まずはやっぱり、仕事で成果を出すのが第一、ということでしょうか。

横山:そうですね。異業種交流などに積極的に取り組むこと自体が悪いわけではありません。職場でも自宅でもない「サードプレイス」を持つことがいい刺激になる場合もあると思います。

 ただ、順番を間違えないようにしたいですよね。

 まず、会社で成果を出すために、精一杯、できる限りのことをやってみる。

 成果を出すためには、上司や先輩にアドバイスを求めること。

 会社が勧めている書籍や教材、研修をしっかり利用すること。わざわざ自分で外部セミナーに参加しなくても、会社のお金で用意してくれるリソースがあるなら、それを活用すること。

 そして、古典的なビジネス書をしっかり読んで常識的なビジネススキルを身につけること。

 よほどのことがない限り、これらのことをキッチリやっていれば、一般的な職場で期待されるくらいの成果は出せるはずです。

 逆に言えば、すべてやってもいないのに、真っ先にオンラインサロンに入ってみたり、SNSのコミュニティに所属してみたりするのは、あまりおすすめできません。

「成功しそうだけれどしない人」と「成功する人」の決定的な差

──たしかに、自己研鑽の時間ばかり優先し、仕事の成果がいつまで経っても出せないとなると、本末転倒ですよね。

横山:トップの成績を出したエース社員など、社内にエキスパートはいくらでもいるはずです。わからないことがあったら、どんどん聞いていけばいい。

時間最短化、成果最大化の法則』にも、著者・木下さんが新人営業マンだった時代の反省点として、こんなことが書かれています。

「成功しそうだけれどしない人」は、話す内容は「成功する人」と同じだが、行動は「成功しない人」と同じ。どれだけ立派なことを話しても行動しなければ成果は出ない。
私はそれだったのだ。
一方、成功している社長はアイデアを10個思いついたら、10個実行していた。
自分は10個思いついても、せいぜい1個しか実行していなかった。
これが、当時の私のウィークポイントだった。(P.39)

 木下さんも当時は、セミナーに通ったり、頭の中にたくさんのビジネス知識を詰め込んだりしていたものの、成果がなかなか出なかったそうです。悪い意味で「意識が高いだけの人」になっていた、と振り返っていました。

 社内には、仕事のやり方を学び、さらに、それを実践できる場も用意されています。使えるものはうまく使って、働いている時間を有効活用できるといいですね。

できる上司だけが知っている「こいつは成長しないな」と思う瞬間・ワースト1
横山信弘
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。