処理水のデマ拡散を巡り
北朝鮮スパイが韓国で暗躍
韓国では今年2月、韓国最大の労働組合で文在寅左派政権と蜜月の関係にあった「全国民主労働組合総連盟」(民主労総)の現職幹部や地方の左翼団体幹部を含む4人が北朝鮮のスパイ活動に加担したとして国家保安法違反で逮捕されている。逮捕者の中には、処理水放出反対の抗議活動を行う尹美香(ユン・ミヒャン)議員の元補佐官も含まれていた。
逮捕された幹部らは「昌原スパイ団」と呼ばれる北朝鮮系地下組織「自主統一民衆前衛」の幹部でもあり、北朝鮮工作員と接触してさまざまな指令を受けていた。その中には、処理水に関係するものもあったという。
北朝鮮工作機関が、幹部らに対し、日本の処理水について「福島沖で怪魚出現、奇形児出生」といったデマを、SNSを通じて拡散するよう指示していたのだ。そして、韓国の市民・大衆運動団体が韓国政府に対して日本の水産物全面輸入禁止、日本商品不買運動といった対日強硬姿勢を取るよう北朝鮮が仕向けたことが明らかになっている。
この狙いは、反日感情を韓国国内で醸成することで日米韓の友好関係を分断することに加え、韓国国内の世論を分断し不安定化させることにある。
そして、中国と韓国左派系野党の間では、処理水放出を巡り連帯を見せている。
6月、中国のケイ海明駐韓大使は、韓国最大野党である左派政党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表をソウルの大使公邸に招き、海洋放出阻止に向けて協力していくことで一致、共闘の姿勢を明らかにした。
李在明代表としては、処理水放出を政争の具とし、日米と連携を深める尹政権に対して、中韓連帯の形で打撃を与えるのが狙いだ。一方で中国は、韓国内の処理水放出に反対する勢力を使って親米政権である韓国の国内世論分断・不安定化、さらに日米韓連携の不安定化を狙っている。
また、李在明代表は、北朝鮮への不正送金容疑で韓国地検から出頭を要請されている。処理水を巡り韓国に工作を仕掛けていた北朝鮮との深い関係の疑いが指摘されており、北朝鮮の思惑を理解している可能性がある。
その北朝鮮の思惑は、韓国左派勢力を取り込み、スパイ活動などで韓国世論を分断し、反日感情をあおることで日米韓の関係をこじらせることにある。
そして、今まさに起こっている日本世論の分断は中国の隠れた思惑の一つであり、保守と左派が分断された韓国と同様の状況になりつつあるのではないだろうか。