日々のストレスに対する対処法を学んでいく
「配属後の変化」に続いてのワークは、自分の仕事を他の人に紹介する「仕事紹介」だ。「FC」各巻に掲載されている、実在企業の新入社員の「入社から現在までの仕事内容」と「ある日の1日の仕事内容」を参考に、各自が自分自身の仕事内容を書き出し、グループのメンバーと共有する。内山講師は「なるべく似ていない分野の仕事をしている人とペアになりましょう。違う職場の人の話を聞くと、視野が広がりますから」と促した。また、「FC」第1巻にまとめられた「働くことの意味」について、「入社後のいま、もう一度読んでみてください」という言葉もあった。確かに、入社前と入社後では、同じものを読んでも受け止め方が違うだろう。内定期間の学びの振り返りを入社後に行うことは、とても有意義だと思う。
1時間のお昼休みをはさみ、受講者たちが再び席に着く。午後のワークに入る前に、ウォームアップゲームが行われた。2人1組のペアになって、じゃんけんからスタートしたゲーム――その詳細はここでは明かさないが、どうすればゲームに勝てるかを考えることは、仕事における「目標から発想」することに置き換えられ、必勝法は「進捗管理」にあてはまるなど、仕事の学びに大いにつながることがわかった。また、“じゃんけん勝負”のように、自分の力だけではコントロールできないものが存在することに気づくのも、仕事をするうえで大切だと思った。
次のワーク「ストレスコーピング」は、「FC」で学んだ内容を生かしたものだ。コーピングとは、ストレスに対する対処法を指す。「仕事にストレスはつきもの。適度なストレスは、かえって人を成長させる」という考えから、ストレスを完全になくすのではなく、上手に付き合い、乗り越えていくスキルを学んでいく。ここで使われるのは、「DIST(*3)」というストレス耐性テストだ。今回の研修プログラムのために、受講者は事前にこのテストを受けており、結果を記したフィードバックシートがその場で各人に配られた。「テストの結果から自分が気をつけるべき傾向をおさえ、客観視できるようになることが、ストレス対処の糸口になります」と、内山講師。また、「問題が起きたときにコントロール『可』とコントロール『不可』に分けて、『可』のほうを変えていきましょう」と続けた。その言葉を聞いて思い出したのが、ウォーミングアップゲームでのじゃんけんだ。じゃんけんの結果が自分の力ではコントロールできないように、仕事でも、たとえば、相手の性格や価値観は自分の力で変えられない。「変えられないことに悩んでストレスを増やすよりも、コミュニケーション方法を考えるなど、コントロール可能なことに力を注いだほうがよい」という内山講師の教えが私の胸にも響いた。
*3 「ストレス耐性テスト DIST」(ダイヤモンド社)は、仕事をするうえで直面するストレス原因を4つに分類し、それらに対する耐性を受検者の普段行動から測定する。また、発生したストレスを受検者がどのように解消しようとするかの特徴を詳らかにする。
入社3カ月の頃は、入社直後の高揚感も落ち着き、仕事の現実に直面し、新たな悩みが増える時期だ。ストレスをうまく解消していかないと、メンタルヘルス不調や離職につながるかもしれない。新入社員がストレスコーピングを学ぶことは、彼ら彼女たちをマネジメントする管理職や人事担当者にとっても有効的だろう。