『手の届く範囲のゴール』を設定することが大切
10分間の休憩をはさみ、次は「論理的コミュニケーション」を学んでいく。「論理的コミュニケーション」という言葉からは難しそうに思えるが、「筋道を立てて考え、相手とコミュニケーションを図る」手法だ。
「図などの『視覚資料』を加えると内容が理解しやすくなる」といった具体的なスキルを学んだ後、「後輩に向けて、社会人になって良かったことを話す」「上司に報告する」などのテーマで話をするトレーニングが行われた。“短い時間での説明”という設定で、受講者たちは緊張気味だったが、学んだことを存分に生かして挑戦していた。「論理的コミュニケーション」のスキルは、仕事だけではなく、日常生活でも役立つものだった。
研修の「まとめ」として、受講者たちは、日々の仕事で取り組む内容を「アクションプラン」として作成した。「成長ゴール」を決めて、そのための具体的な行動を書いていくのだが、これは、今回の研修の冒頭で語られた「なって良かった自分」を実現させるためのプランでもあるという。「ポイントは、『手の届く範囲のゴール』に設定すること」と、内山講師が全員に伝える。また、「作っただけで実践しないアクションプランは無意味」だと説き、研修後1カ月くらいを目安に、アクションプランを振り返り、上司や同期のフィードバックを受けることを勧めた。
最後に各自がアンケートを提出して研修は終了となったが、受講者たちはすぐには会場を退出せず、グループのメンバーと会話をしたり、書き込まれた模造紙の写真を撮ったりしていた。
「受講者がなかなか帰らないのは、コミュニケーションが、グループ内の違う会社のメンバーとの間でしっかりとれたことの証だと思います」(内山講師)
内山講師が研修のオープニングで語っていたとおり、「講義」よりも「対話」を中心にした研修なので、新入社員どうしの密なコミュニケーションが実現したのだろう。
「いきなり、『グループで話し合ってみよう!』だと、外交的な人がリーダーシップをとり、自分の意見を出して、周りの人は『それでいいです』になりがちです。でも、今日行ったワークのように、付箋などを使って自分の考えを書き、それを共有していけば、全員がコミュニケーションをとれます。自分が書いたものや考えたことが他の人にも影響を及ぼしている感覚になって、“一緒に学習している”気持ちが生まれやすくなるのです。また、書いたものを見ながら話せるので、『これとこれ、似ているよね』などと、端的に指示語が使える。模造紙と付箋の活用は『論理的コミュニケーション』で学んだ視覚資料作成のスキルにも通じ、コミュニケーションの負荷が下がる効果もあります」(内山講師)
現場で役立つスキルを、別の会社の“同期”たちと意見交換をしながら学んだ新入社員たち――入社1年目の研修での学びが、彼ら彼女たちをどう成長させていくのか。引き続き見届けていきたい。