グループを超えた意見交換も行われていき…
最初に、「配属後の変化」を振り返るワークが行われた。「社会人になって何が変わったか?」「入社前に考えた『学生と社会人の違い』について改めて考えてみる」など、まずは各自の「変化」を個人ワークで付箋に書いていく。その後、お互いの付箋を紹介し合うのだが、その方法が斬新だった。机上に広げた模造紙にそれぞれの付箋を貼り、それを見ながら意見交換した内容をどんどん書き込んでいくのだ。内山講師は、「好きな色のマーカー(マジック)を使いましょう。ひとつの方向に文字を書いていく必要はありません。思いついたことを落書きするようなイメージで書いてください」と伝え、各グループを回りながらアドバイスの声をかける。私もいくつかのグループの様子を見せてもらったが、付箋をどんどん貼っていくグループもあれば、模造紙をカラフルな文字で埋めていくグループもあり、それぞれの個性があふれていた。そして、遊び心のある方法が功を奏したのか、どのグループも話し合いが活発に行われている。
テーブルごとに盛り上がるなか、内山講師は、設定の時間を少しだけ延長して、「入社して、思っていたことと違う面はありますか?」など、新たな問いを追加していく。さらに新鮮だったのが、グループ内だけではなく、グループを超えた意見交換も行われたことだった。その方法もユニークだ。1人だけが席に残り、それ以外の人は、他のグループに出向く。残った人は、出向いてきた他のグループの人に対し、自分のグループでどんな話が出たのかを説明する。その後、話を聞いた人が、話の内容を自分のグループに持ち帰るというものだ。他のグループの内容に刺激を受けて、新たな意見が生まれ、そこに内山講師の「問い」も追加され、コミュニケーションが重層的に膨らんでいく。
この一連のワークの流れのなかで、私がもうひとつ注目したのが、「時間設定がゆるやかなこと」だ。4月の新入社員研修時は、ワークの制限時間を守ることが重視されていたが、内山講師は「だいたい10分くらいで」などと、多少アバウトな時間提示を行い、「問い」の追加によって、さらに時間が延ばされたりもした。そこにはどんな意図があるのだろうか。研修後に、私は内山講師に尋ねた。
「4月は時間管理を考えること自体を学習としていましたが、今回は時間をゆるやかにして、場の状況を見ながらファシリテーションを行いました。成果物にこだわるよりもプロセスを可視化し、可視化したものを材料にコミュニケーションを続け、自分の考えを構成してもらいたいからです」(内山講師)
各ワークの終了を告げるときも、内山講師は、強い音や時間のカウントダウン数字をモニターに表示するのではなく、柔らかな音を鳴らしていた。緊張を強いない空気も、この日の活発な意見交換の支えになったのではないかと私は思った。