タクシーやバスでやってきた
高齢者たちも容赦なくお断り

 このような中、犠牲になっているのは高齢者だ。全てがそうとは限らないが、スマホを使いこなせない高齢者は多い。偶数月の15日は年金支給日。高齢者でATMは長蛇の列となり、ATMを使えない高齢者は窓口に並ぶ。

 年金支給日、窓口は高齢者の対応に追われる。ATMの操作説明の付き添い、振り込め詐欺への注意喚起、最寄りの支店がなくなった不便さを訴える苦情への対応など…。

 その窓口を「予約制」と言って締め出しているのだ。一部の高齢者は、融通の利く遠方の支店までバスやタクシーを使い、なけなしの年金を引き出している。だが、対応の悪い支店の窓口ではこんなやりとりがある。

「お客さま、当店の窓口は予約制となっております。ご予約はいただいていますか?」

「予約しなきゃいけないなんて知らなかったわ。振り込みをしたいんだけどダメかしら? ATMは苦手だから、キャッシュカードはうちに置いてきちゃったわ。印鑑と通帳があればできるでしょ?」

「はい。ただ窓口は予約制ですので、お受け付けはいたしかねます」

「何よ、近くの支店がなくなったから、わざわざタクシーで来たのよ。やってちょうだい」

「ですから、予約をお取りいただかないとできません」

「ほんと、融通利かないわね。じゃあ、明日また来てあげるから、予約を取ってちょうだい」

「予約はネットから受け付けています。ここにQRコードがありますので…」

「そういうの、分からないわ。今、来てるんだから、おたくのほうでやってくださらない?」

「それはいたしかねます。どなたか身の回りでお分かりになる方にやっていただくとか…」