VIVANTで話題の「別班」殺人OKって本当?戸籍は消されるの?防衛省出身ジャーナリストが考察写真はイメージです Photo:Chris McGrath/gettyimages

TBS系の日曜劇場「VIVANT」が大盛り上がりだ。ドラマの中で自衛隊の秘密組織として描かれている「別班」についても、その内情を解説する記事が出てきている。そこで防衛省などで30年以上にわたり、対スパイ活動や海外情報収集などに携わってきた筆者も筆を執ることにした。「別班に入ると戸籍や自衛官としての身分は抹消されるの?」「現実世界の別班も海外で活動し、殺人を含むミッションを行っているの?」といった疑問にお答えしていこう。(安全保障ジャーナリスト、セキュリティコンサルタント 吉永ケンジ)

「VIVANT」放送開始を受けて
筆者の電話が突然鳴った

 満開の桜が散り始めようとする頃、あるテレビ局関係者からの電話が鳴った。

「ちょっとさ、本当に死人とか出ないの? 大丈夫なのか」

 20年来の付き合いの彼は、7月から放送されるTBS日曜劇場「VIVANT」が、過去に“影の軍隊”と形容された自衛隊の秘密組織「別班」をテーマにすると知って、心配で連絡してきたのだ。

 筆者は変な本の読み過ぎだと鼻で笑ったが、彼の気持ちはわからないわけでもない。なぜなら、ほとんどの日本人は自衛隊のインテリジェンス(諜報活動など)の姿を知らないばかりか、別班に触れると命を失うなど、ありもしないような話が大手を振って出回っているのだから。

 そういうわけで、四半世紀以上にわたって自衛隊で情報戦の最前線に立ってきた筆者には、VIVANTが描く秘密組織「別班」について少しくらい語る資格があるだろうと思い、筆を執ることにした。

 そこで本稿では、VIVANTファンなら気になるはずの、以下のような疑問についてお答えしていく。

・「別班に入ると戸籍や自衛官としての身分は抹消されるの?」
・「陸上自衛隊小平学校(現・情報学校)の特殊コース、心理戦防護課程って何?」
・「現実世界の別班も海外で活動し、殺人を含むミッションを行っているの?」

 ただ筆者の立場上、別班の詳細について、あまり多くは語れないことをご容赦いただきたい。