写真:警視庁Photo:PIXTA

阿部寛演じる“野崎守”が
所属する外事4課の任務

 日曜劇場「VIVANT」(TBS系)にて、阿部寛氏が警視庁公安部外事4課の捜査官“野崎守”を演じている。

 そもそも、公安部外事課とは、外国勢力によるテロの未然防止、スパイ活動や破壊工作などを取り締まる部門である。

 2021年に3課体制から4課体制に再編し、ロシア・東欧担当の外事1課、中国・東南アジア担当の外事2課、北朝鮮担当の外事3課(旧外事2課から派生)、そして中東の過激派、国際テロに対応する外事4課(旧外事3課)といった編成となっており、明確に任務が分掌されている。

“野崎守”は国際テロ対策に従事する外事4課所属とのことである(大使館勤務の在外公館警備対策官としての身分は割愛する)。

 筆者は同じ外事課内でもスパイ捜査を担当したが、外事各課でその担当は厳密に分かれている。

 実は外事4課の国際テロ対策(通称:国テロ)は、9・11米国同時多発テロ事件を契機にその存在が注目され、警視庁内でも人気の所属だったため、筆者もスパイ捜査と国テロ対策のどちらの従事を希望するか相当迷った経験がある。

 ちなみに、外事警察は主に国内における諸外国に対するカウンターインテリジェンス(防諜活動:防諜に関する情報収集、諜報活動の操作)を担当しており、海外における積極的な情報収集(対外情報活動)や捜査活動(当然行えず対象国に協力を要請する)は行っていない。

 実は、この対外情報活動について、日本のインテリジェンスには脆弱性がある。

 対外情報機関は、外国の政治・軍事・外交情報などを収集し、警察(例:外事課)や防衛省などの防諜機関は、外国の情報活動の把握やスパイを摘発する任務を持っている。

 しかし、専門的に対外情報活動を担っている機関はない。

 まず、防衛省は国内の情報収集活動を行っているが、海外に目を向ければ通信傍受や衛星画像の解析、レーダー情報などの軍事的な情報収集が中心である。

 また、「VIVANT」でもカギを握りそうな“別班”なる非公然情報組織が自衛隊内に存在すると言われているが、2013年の鈴木貴子衆議院議員の質問に対し、政府答弁として公式に“別班”の存在が否定されている。

 一方で、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が“別班”の実像に深く迫っており、“別班”はかつて陸幕2部に存在、その後、陸幕2部は陸幕運用支援・情報部情報課に改編されているが、“別班”に該当する部署が廃止されたという話は聞いていないという。

 筆者の得ている情報では、別名で同組織が存在する可能性がある。