チャンバラ合戦(c) DAIKI AKASAKA, GENTOSHA MEDIA CONSULTING 2023

「エンゲージメント」とは、社員の企業に対する帰属意識を表す指標のこと。これが高い企業においては離職率の低下や生産性の向上といったプラス作用があるが、社員同士が本気であそべばエンゲージメントが飛躍的に高まる事例があるという。本稿は、赤坂大樹『エンゲージメントを高める あそぶ社員研修のススメ』(幻冬舎メディアコンサルティング)の一部を抜粋・編集したものです。

社員のエンゲージメントの調査で
日本企業は世界最低ランク

 少子高齢化による人手不足が顕在化した昨今、社員が退職するばかりで新たな人材を採用できず経営の悪化に陥る企業が増加しています。

 こうした人材難に苦しむ企業の間で、その解決策として重要性が叫ばれているのが社員の「エンゲージメント」を向上させる取り組みです。エンゲージメントとは社員の企業に対する帰属意識を表す指標で、これが高い企業は離職率の低下や生産性の向上といった、プラスの作用がもたらされることが分かっています。

 しかし、残念ながら日本企業はまだまだこのエンゲージメントが低い状況にあります。アメリカで世論調査や人材コンサルティング業を手掛けるギャラップ社が2021年に調査したエンゲージメントの国際比較結果によると、日本企業において「エンゲージメントが高い社員(士気・熱意がある社員)」の割合は5%しかないことが分かりました。これは調査対象129カ国中128位で、諸外国と比べても極端に低い水準です。

 この状況は日本企業の課題といえますが、逆にいえばエンゲージメントを改善して既存の人材を有効活用できれば、人材難が続く現代においても企業を成長発展に導くことができます。

 英語のengagementは婚約、誓約、約束、契約などの意味をもつ単語で、深いつながりをもった関係性を示すことから、会社と社員に対しての関係性を表す概念として使われています。似たような言葉としてモチベーションがありますが、モチベーションとは異なります。

 モチベーションはあくまで本人のなかでの動機であるのに対して、エンゲージメントは会社や周囲の社員、関係者との間で生まれてくるものです。極端な話、モチベーションは会社や周りとの関係性は良くなくても、本人がモチベーションを維持して仕事しようとしている状態です。一方、エンゲージメントは、本人だけがやる気があってもエンゲージメントが高い状態とはいえません。会社や関わりのある人たちとの信頼関係から、仕事に対するやる気が自然と湧いているような状況が、エンゲージメントが高い状態といえます。

 エンゲージメントの重要性については、すでに多くの経営者が気づいています。会計監査・総合コンサルティング会社のPWC Ja-panが実施した「2021年度世界CEO意識調査」を見ると、「会社の競争力を高めるために、人材戦略のどのような点を変えていきますか」という問いに対して、日本の経営者の45%が「従業員のエンゲージメントおよびコミュニケーション」と回答しました。世界全体の数値が30%であることと比較すると、日本企業がエンゲージメントに高い関心をもち、経営課題として取り組んでいる姿勢がうかがえます。