また、同調査では「従業員を増やす」と答えた日本の経営者は27%でした。世界全体では44%なので、世界と比較すると日本企業は新たに人員を採用するよりも、今いる人材のエンゲージメントを高めて競争力を高めたいと考えているわけです。

従来型の研修手法や社内イベントでは
社員の意識までは変えられない

 多くの会社がエンゲージメントを課題に挙げ、各種の研修を実施していることと思います。しかし、エンゲージメント向上に効果的だとされている研修は世の中にたくさんあるものの、あれこれ試しても期待するほどの効果が得られないというジレンマに陥っている会社も多いのではないかと思います。

 例えばエンゲージメント向上のための研修として代表的なものに、ブレインストーミングやKJ法があります。

 ブレインストーミングは複数人が参加し、会議形式でアイデアを出し合って質の高い企画に練り上げていくという集団発想法の手法です。

 KJ法はブレインストーミングなどで得た情報やアイデアをカードに書き出し、同じ系統のカードをグループ化することで、情報の整理や分析などをする手法です。文化人類学者の川喜田二郎が著書『発想法』(中央公論新社)で提唱し、彼のイニシャルをとってKJ法と名づけられました。

 どちらもアイデアを着想したり磨き上げたりしていくうえで有効な手法ですが、実際に参加者全員が活発な意見交換ができるかというと、なかなか難しいというのが現状です。

 研修の場面では全員が必ず発言する、どの意見も尊重するなどのルールがあるので、控えめな人も発言する機会がありますが、どうしても「やらされ感」が出ます。また、実際に階層や別の部署の人が会議に混じると、相互理解が浅いためどうしても発言力のある人や中心メンバーが主に発言することになり、おとなしい人や立場的に下の人は聞き役になってしまいがちです。

 これは社員の意識が変わらないからにほかなりません。基本的にブレインストーミングやKJ法はやり方・行動を学ぶためのものなので、意識にまではアプローチできないことが多いのです。