アルツハイマー病の新薬レカネマブの承認を「軽率」と断じる理由、認知機能低下27%抑制なのになぜ?

高齢化に伴い、アルツハイマー病患者の増加が社会問題になっている。8月21日、厚生労働省はエーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬のレカネマブの承認を了承した。これは患者と家族にとって朗報なのか。アルツハイマー病の権威は警鐘を鳴らす。(カール・へラップ 取材・構成/大野和基)

厚労省のレカネマブ承認は
「軽率な決定」

 8月21日、日本の厚生労働省は、エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬のレカネマブを承認しましたが、それをニュースで知ったときの、率直な気持ちは“hasty decision”(軽率な決定)ということです。

 FDA(米食品医薬品局)がレカネマブやその後のドナネマブを承認したことから見ると、日本がレカネマブを承認するのも避けられなかったでしょう。

 しかし、そもそもFDAもこれを承認すべきではなかったのです。承認すべきではない薬を承認した典型的なケースと言っても過言ではありません。

 開発した製薬会社は「レカネマブを服用した患者のグループは、偽薬グループに比べて認知機能の低下が27%抑制された」と喧伝しています。この数字はうそではありませんが、巧みなマーケティング戦略です。つまり算術的にこの数字を出すことはできますが、これが患者やその家族にとって何を意味するかを考えると、人を惑わせる数字でしょう。