エーザイと米バイオジェンが共同開発するアルツハイマー病(認知症の一種)の治療薬「レカネマブ」が米国で薬事承認された。とはいえ、本承認には至らず、今後データを揃えるという条件付きの“迅速”承認。それは2年前同じように米国で迅速承認されたものの、期待外れに終わった“ある薬”の顛末をほうふつさせる。特集『総予測2023』の本稿では、レカネマブが今度こそ“夢の新薬”となり得るのか、薬の効果と薬価の観点からその展望を探る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
米国での迅速承認を勝ち取った認知症新薬
“夢の新薬”の真の実力とは?
2023年1月6日、製薬大手エーザイが米バイオジェンと共同開発するアルツハイマー病(認知症の一種。認知症患者の6~7割を占めるとされる)治療薬「レカネマブ」が、米国FDA(食品医薬品局)より迅速承認された。さらに16日、エーザイは日本でもレカネマブの承認申請を行ったと明らかにした。22年11月末に、同社はレカネマブが第3相試験(臨床試験の最終段階)でプラセボ(偽薬)より早期アルツハイマー病患者の進行を27%抑制したと発表し、各国で承認申請をする意向を示していた。
現状アルツハイマー病は、一度罹患すると病気そのものの進行を食い止めることは難しい。そのため、進行抑制効果が認められたとするレカネマブは、まさに“夢の新薬”だ。全世界における認知症患者数の推定は5500万人(世界保健機関〈WHO〉による)。まずは米国での承認を勝ち取り、一大市場の覇権を握るためのハードルを一つ越えた形だ。
しかし、本承認には至らず、今後さらにデータをそろえるという条件付きの「迅速承認」にとどまったことで、同じく夢の新薬といわれながら期待外れに終わった“あの薬”の顛末をほうふつさせることは否めない。