ベテラン人材が雲散霧消

 前述した京都のAホテルについての投稿には、「外国人が多い国際ホテルにもかかわらず、従業員は通訳アプリ依存で、トラブル解決に時間がかかる」といった訴えも書かれていた。せめてツールを使って対応しようというホテル側の苦肉の策も見て取れ、ポストコロナの観光業界における人材不足は想像以上に深刻であることがわかる。

 一方で徐さんは「中国は今、国際社会で何かとバッシングの対象であり、一部の中国人は、欧米人とアジア人に対する接遇の差などに過敏になっています」とも説明していた。

 別の観光業従事者からも声が上がる。中国人訪日客の旅程をコーディネートする遼寧省出身の陳浩軒さん(仮名・40代)は、コロナ禍の前と後では飲食店の雰囲気がまるで違うと語る。

「最近、中国人訪日客の間で人気があった都内の高級割烹(かっぽう)B店を訪れたところ、上手にもてなすベテラン従業員が辞めてしまっていました。そのせいか、今では少しでも予約時間に遅れると、この店の新しい従業員は接客態度を露骨に変化させ、楽しみにしていた夕食も気まずいものになってしまうのです」

 コロナ禍前まで、確かに一部の中国人訪日客は“マナー不足でわがまま”だと厄介がられたが、それでも互いに学習しながら隔たりを縮めてきた。その橋渡しをしたのが、インバウンドに熟練した従業員などであったが、コロナ禍を経て、こうした柔軟な対応ができる人材がいなくなってしまったという。

 陳さんは「割烹B店の仲居さんには、ベテランなりの気配りがありました」と言い、人材が入れ替わってしまったことを惜しんでいた。