ロンドンのストリートカルチャーで有名な観光名所、イーストエンド。ある夜、突然壁が真っ白に塗りつぶされ、そこに赤いスプレーで「富強」「民主」「文明」「和諧」「自由」「平等」「公正」「法治」「愛国」「敬業」「誠信」「友善」という漢字24文字の落書きが現れた。実行したのは、英国王立芸術大学に留学中の中国人学生。これは悪質ないたずらなのか、政治的行動なのか、それとも現代アートなのか?(フリーランスライター ふるまいよしこ)
8月5日、ロンドンのブリックレーンに
突然、漢字で書かれたメッセージが現れた
イギリス・ロンドンのイーストエンドに位置するブリックレーン(Brick Lane)は、ストリートカルチャーで有名な観光名所だ。その名は、この辺りにかつてブリック、つまりレンガを作る工場があったことに由来するらしい。
観光ガイドによると、この地域に海外からの移民が暮らすようになり、さらには移民たちが持ち込んだ多様な文化やタフな生活ぶりがアーティストたちを引き付けたのが、その歴史の始まりとなったという。
その一角の、長さ100メートルに満たない道の両側にある壁は、色とりどりの「グラフィティ」と呼ばれる作品がびっしりと描き込まれ、道行く人たちを楽しませてきた。だが、8月5日夜を境に、突然その光景が激変した。夜間のうちに両側の壁が真っ白に塗りつぶされ、片側には赤いスプレーで、「富強」「民主」「文明」「和諧」「自由」「平等」「公正」「法治」「愛国」「敬業」「誠信」「友善」という、中国で使われる簡体漢字24個を使った単語が噴き付けられていたのだ。
通りかかった人たちは、見慣れた、カラフルなグラフィティが消え去ったことに衝撃を受け、また漢字が読める中華系の人たちはロンドンの人気ストリートに現れた無機質な文字を読んでさらに驚いた。