金融投資会社が博士に接近
ガルブレイスの「告白」
ところでガルブレイス博士は、本書のなかでさりげなく(?)「告白」をしています。ヨーロッパで投機熱が高まったある時期、金融関連の投資会社から博士に取締役就任の要請があったそうです。目の前にニンジンをぶら下げられたわけです。しかし、博士は断りました。
もし私が取締役になっていたとするならば、経済学者としての私の名声を何らか傷つけることになったであろうし、また、読者にこの本を提供することもできなかったであろう。(127ページ)
アベクロバブルがいつ、どのような顔をしてやって来るのかはわかりません。けれども、ユーフォリアの誘惑にどのように向き合えばいいのか、理性と感情の相克をどう乗り越えるのか、ガルブレイスはこの名著に教訓を書き残しています。
興奮したムードが市場に拡がったり、投資の見通しが楽観ムードに包まれるような時や、特別な先見の明に基づく独得の機会があるという主張がなされるような時には、良識あるすべての人は渦中に入らないほうがよい。これは警戒すべき時なのだ。たぶん、そこには機会があるのかもしれない。紅海の底には、かの宝物があるかもしれない。しかし、そうしたところには妄想と自己欺瞞があるだけだという場合のほうがむしろ多いということは、歴史が十分に証明している。(155ページ)
この国には「喉元過ぎれば熱さを忘れる」「羹に懲りて膾を吹く」という故事ことわざがありますが、私たちはいずれのコンセプトで次のバブルと相対することになるのでしょうか。
◇今回の書籍 1/100冊目
『新版 バブルの物語 人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのか』
なぜ、金融バブルは繰り返されるのか。17世紀オランダで起きたチューリップバブルから、1929年の世界大恐慌、さらには1980年代末の日本のバブルに至るまで、古今東西で起きた「熱狂」とその崩壊過程を描く。バブルを希求する人間の本質と、資本主義経済の根幹に迫った名著。
ジョン・K・ガルブレイス 著
鈴木哲太郎 訳
定価(本体1500円+税)
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