再び「幻想」が到来?
バブル発生20周年期説
大胆なプリント・マネー政策――すなわち大量の資金供給は一方で、大なり小なり副作用をもたらします。深刻な副作用の1つが「バブル発生」です。
米欧そしてアジアの中央銀行は、リーマン・ショック後の世界同時不況からの脱出を目論み、前代未聞の金融緩和に走りました。その影響で世界中にマネーが溢れかえり、結果、株式や不動産などの投機的市場ではバブル現象が世界規模で拡大しています。米国では金融危機を引き起こしたサブプライム住宅ローン担保証券への投資が復活し、またぞろ活況を帯びてきているそうです。
言ってみれば、中央銀行発のバブル。いずれ日本にも中銀発「アベクロバブル」が発生するのでしょうか?
「経済学の巨人」と評されたガルブレイスは、『新版 バブルの物語 人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのか』で次のように述べています。
この次の大がかりな投機のエピソードはいつ来るだろうか?それはどのようなもの――不動産、証券市場、美術品、ゴルフ場、骨董品の自動車――について起きるだろうか?こうした問いに答えはない。誰にもわからない。しかし、確実なことが1つある。それは、こうしたエピソードはまた生まれるだろうし、その先にはもっとあるだろう、ということである。(155〜156ページ)
博士はまた、「幻想が幻滅に変わってから再び幻想が到来するまでの20年周期というのは、19世紀のアメリカではきわめて規則的に見られたところである」とも指摘しています。1980年代後半に日本を覆ったバブル景気――その崩壊から20年を経て、再び「幻想」がチラつき始めているのでしょうか。
実際、今年1月時点の地価動向報告(国土交通省)によれば、全国150地区のうち51地区の地価が3カ月前に比べて上昇しています。地価や株価が上昇し、その上昇がずっと続くのではないかという期待や願望や楽観が多くの投資家のあいだで形成され、その期待はやがて投機熱に変わり、地価も株価も実際の価値から大きくかけ離れてさらに上昇する――。まさに「バブル発生」の瞬間です。
[画像を拡大する]
この段階に至ると、人々は頭脳に極度の変調をきたすほどの陶酔的熱病(ユーフォリア)にうなされ、それに取りつかれた個人、企業、経済界全体が危険に晒されます。にもかかわらず、強い警戒心を持つこと以外に予防策はありません。ガルブレイスはそう考え、この小著を「警告の書」とすべく世に問うたのです。