黒野「これは時間の使い方において大事な『優先順位のつけ方』ですから、時が来たら詳しくお教えしますよ。
今日の1番のポイントは、『時間もお金と同じように事前に確保しなさい=時間貯金をしなさい』ということです」
黒野はティーカップに口をつけた。そして紅茶をひと飲みすると、何かを思い出したように口を開いた。
黒野「ちなみに、よく多くの人間が『○月○日までにやろう』と締め切りを決めますが、あれはダメですよ」
春香「え、ダメなんですか?だって締め切りがないと、いつまでも延ばし延ばしになっちゃいませんか?」
黒野「もちろん効果がないわけではありませんよ。心理学でも『締め切り効果』と言って、効果があるとわかっていますからね。
ただもっといい方法がある、ということです。そして実は、青井さんは、もうそれを実践してるんですよ」
春香「もしかして……。
わたしが先週、時間貯金をして、それを今日使えたことですか?」
黒野「それです!」
黒野はぴしゃんと手を叩いた。
黒野「時間を確保するうえで大事なのは、『いつまでにやる』という締め切りを決めるだけではなく、『いつやるか』を決めることなのです。そうすると、自動的に時間貯金もできて、今日のように気づいたら実行できている、となるわけです」
黒野は人差し指を立てて、ドヤ顔で春香のほうを見ると、図を描きはじめた。
黒野「たとえば『来週中に会議の資料を作る』と決めた場合と、『来週水曜日の14時から16時に会議の資料を作る』と決めた場合、どちらのほうが確実に実行できますか?」
春香「たしかに、いつやるかを決めていれば、あせらなくて済みそうですね。期限だけ決めるのだと、直前にあせってバタバタしそうです。最悪、期限を越えるかも……」
黒野「その通りです。これは何も仕事に限ったことではないですよ。プライベートでも『今月中にお父さんのプレゼントを買う』よりも『5月13日12時にお父さんのプレゼントを買いに行く』のように、いつやるのか、日時を決めたほうが実効性が増して、ムダのない時間の使い方ができるようになるんです」