岡山県倉敷市内で2つの結婚式場を経営する著者が、結婚した2人がずっと幸せでい続けるための方法としてスタートした「夫婦の理念」作り。3組に1組の夫婦が離婚する今の時代に、離婚率ゼロというこの取り組みを綴った書籍『夫婦の理念』から、内容の一部を紹介します。

とある地方の結婚式場が始めた「夫婦の理念」という取り組み写真はイメージです Photo:PIXTA

会社に理念があるように、夫婦に理念があってもいい

「理念」という言葉を聞いて、真っ先に浮かぶものと言えば、「企業理念」ではないでしょうか。または、学校などで「教育理念」という言葉を使うこともありますね。いずれも何か組織に属する人たちが同じ方向へ向かうための目標や指針であったり、事業や計画などの根底にある考え方だったりをいうときに使う言葉です。

 母が1人で始め、私が手伝う形でスタートしたサムシングフォーは、そのときどきで目の前に現れる「新しいこと」にチャレンジすることを目標にしていたため、改めて理念というものを作ってはいませんでした。

 その後、会社として成長し、スタッフの数が増えるにつれ、各セクションが考える「喜んでいただきたい中身」に少しずつ歪みが生じてきました。

 ウェディングプランナーは新郎新婦さまの願いをできるだけ叶えてあげたいと思うし、司会者やキャプテンは滞りなく式を進行することが重要です。さらに、料理セクションは温かいうちにスープを飲んでいただきたいと思う。そもそもこの業界にいる人は、「新郎新婦さまに喜んでいただきたい」という思いで仕事をしている人がほとんどです。

 どのセクションのスタッフも新郎新婦さまとゲストを喜ばせたいという思いで仕事に取り組んでいることに変わりないのに、何か一つ歯車が狂うと、他のセクションにしわ寄せが生じてしまう。そんな状況では、組織はまとまっていきません。

 そこで作った「企業理念」。

 たった数文字の言葉がこれほどまでに会社を変えるとは、私自身思ってもみませんでした。企業としての指針が示されたことで、それまでバラバラだったセクションが「新郎新婦さまの幸せのために」協力し合うようになりました。そして、気がついたのです。私たちは各分野のプロであると同時に、お互い協力し合う同志であることを。

 夫婦は社会の最小単位です。恋愛の延長線上に結婚(夫婦)があるイメージなので、「理念」という言葉からはいちばん遠いところにいるように見えますが、実は夫婦にこそ必要なものではないか。

 会社の理念を作った際、母がどんな思いでこの仕事を始めたのか、何を大切にしてきたのか、過去を振り返ることから始め、企業としての在り方や目指すもの、未来を考えていきました。

 そして、それを言葉にまとめたことで、自分たちが向かっていく道が明確になりました。それと同じことを夫婦でもやってみるのです。

 そう、目的は同じで、夫婦も協力し合う同志なのです。