【 実際の相談事例 】
 パートナーとは、付き合って10年以上になります。
 付き合い始めた当初から、私がひどいことを言って困らせてしまうことはありましたが、最近になってその頻度が増えてきて……。
 パートナーは優しい人なので、こんな私でも「一緒にいたい」と言ってくれています。
 だけど、このままでは私に愛想を尽かし、別れを切り出されてしまいます。
 だから、こんな自分を変えなければいけないんです!

 相談者Yさんは、穏やかな人でした。

 事実、パートナー以外にひどいことを言ったり、突然誰かに怒りが爆発するようなことは、これまで一度もないといいます。
 それどころか、誰かに対して自分の意見を言ったり、感情をぶつけるのが苦手で、その場では我慢してしまい、ひとりになった時に「ああ言えばよかった」「こうすればよかった」と後悔することが多いのだそうです。

 Yさんの怒りが爆発するのは、パートナーにだけ、だったのです。

我慢はいつから?

 そこで、「自分の気持ちを我慢するようになったのは、いつ頃からですか?」と質問したところ、Yさんは「子どもの頃からずっとそうだった」と答えました。

 両親はYさんが子どもの頃から仲が悪く、顔を合わせればしょっちゅう喧嘩をしていました。
 大きな声で言い争うこともあれば、物が飛ぶほどのこともあり、家にいるのが本当に怖かったといいます。

 そんな環境では自分の気持ちを両親に聞いてもらうことなどできず、寂しい時も、辛い時も、悲しい時も……ずっとひとりで頑張って乗り越えてきたのです。

 子どもの頃に抑え、我慢した感情というのは、勝手に消えてしまうことはありません。
 Yさんの場合は、自分を受け入れてくれる相手(パートナー)が現れたことで、子どもの頃は我慢するしかなかった気持ちが「怒り」という形で表出していました。

 怒りが抑えられない、というと、ダメなことに聞こえるかもしれませんが、怒れなかったYさんの場合は、やっと怒りを出せるようになったとも言えます。
 今までできなかったことが、やっとできるようになったとも言えるのです。

 Yさんのように怒りが爆発する自分を責め、「我慢が足りないからだ」「感情がコントロールできていない」と落ち込む人は多いのですが、むしろその逆です。
 我慢強く、自分の感情をコントロールできる人ほど、怒りの感情が爆発しやすい傾向があります。

怒りが抑えられなかったのは
どんな時?

 怒りが抑えきれなかった時のことを思い出してみてください。